ブレグジットの期限は来年3月末だが…… ©共同通信社
英国のメイ首相は、EUと合意に達した585頁に及ぶ離脱協定案について、
11月14日に開いた緊急閣議で承認を得た…
EU離脱で孤立 英国・メイ首相の
心の支えは安倍首相だけ
英国のメイ首相は、EUと合意に達した585頁に及ぶ離脱協定案について、11月14日に開いた緊急閣議で承認を得た。だが、翌15日、メイ首相の“ソフト・ブレグジット路線”に反発した交渉責任者のラーブ離脱担当相ら閣僚を含む7人が要職を辞任。熱烈なクリケット・ファンで知られるメイ首相はこの日の会見で「政権崩壊まであと幾つウィケット(打者の後方に置かれる3つの柱)を倒せばいいのか」と質問され、「最後の最後に得点してみせる」と強がってみせたが、混乱が収まる気配はない。
最大の問題は、模範的な優等生にありがちなメイ首相のリーダーシップだ。
メイ首相の内相時代に仕えた官僚は筆者に「メイはリスクを取るのを避け、批判を嫌い、内輪以外の人を信頼しない。このため決断を避けるか、決断しても極めてマズイものになってしまう」と語る。今回も当初は「悪い合意ならしない方がマシ」と啖呵を切ったが、ハード(強硬離脱)からソフトに舵を切り、中途半端な印象を与えた。世論調査でも、離脱交渉の不支持率は73%に達している。
国外にも、メイ首相の味方は少ない。
心の支えは安倍首相だけ?
そもそもEUの協力がなければ英国の離脱は不可能。EUとの自由貿易圏、アイルランドとの間に「目に見える国境」を復活させない、英国本土と北アイルランド間に「新たな国境」を作らない――というトリレンマ(三要素の実現で板挟みの状況)は英国独りで解消できない。だが来年5月の欧州議会選挙を控え、欧州懐疑政党の台頭と離脱ドミノを警戒するEU首脳はギリギリと英国に譲歩を迫る。
EUやドイツを貿易赤字の元凶と敵視するトランプ米大統領との関係も良好とは言えない。EUにすり寄るメイ首相だが、合意前後3回の演説を分析すると「EU」「世界」を各12回、「日本」「アジア」も各3回言及したのに対し、“特別な関係”の米国はゼロ。トランプ氏を意識的に避けているようだ。
そうした中、安倍晋三首相だけが「EU離脱後の英国がTPPに加盟するのを心から歓迎している」とエールを送る。“孤立無援”のメイ首相にとって、心の支えは安倍首相くらいなのかもしれない。
Source: 文春砲