プロボクシングの世界バンタム級4団体王座統一戦が13日、東京・有明アリーナで行われた。WBAスーパー、WBC、IBF世界同級王者井上尚弥(29=大橋)が、WBO世界同級王者ポール・バトラー(34=英国)に11回1分9秒、TKO勝ち。日本人初、史上9人目の4団体統一王者となった。
井上尚弥 ○ 11回TKO ● ポール・バトラー ◆ラウンドVTR◆
1R 井上10-9バトラー
互いに距離をはかり、様子を見る中でバトラーがジャブを放つ。1分過ぎに井上がワンツー。さらに左右フックで圧力をかけていく。バトラーがガードを固め手数減る。
2R 井上10-9バトラー
井上が圧力をかけながら右ストレート。バトラーも左フックで応戦する。井上は1分過ぎにジャブから左ボディーの連打。井上は俊敏な守りでも魅了する。
3R 井上10-9バトラー
井上がバトラーをコーナーに追い詰め、右フックをテンプルへ連打。ガードを固めるバトラーはパンチが出ない。井上はロープに追い込み、右フックから左ボディー。
4R 井上10-9バトラー
井上の強烈なジャブにバトラーは足を使い、リングを広く使ってかわしにいく。井上はコーナーに詰めて重い右フックを連打したが、とらえきれず。
5R 井上10-9バトラー
井上は堅い守りのバトラーに攻めさせての隙を狙う。強烈な右ストレートから左ボディーを見舞うがバトラーも巧みにかわす。
6R 井上10-9バトラー
じれた井上がサウスポーにスイッチして誘いをかけるが、バトラーは乗ってこず。さらにノーガードで誘いをかけるが、変わらず堅い守りを崩せず。
7R 井上10-9バトラー
ガードを固め、巧みにバックステップを切るバトラーに井上も攻め手を失っていく。顔を突き出すように誘いをかけるが、状況は変えられず。
8R 井上10-9バトラー
バトラーが左フックからボディーと攻めるが、井上は余裕でかわす。攻めにきたバトラーに対し、井上が狙ったクロスカウンターは不発。井上は手を後ろに組むポーズまで見せて誘いだそうとするが、決定打を奪えない。
9R 井上10-9バトラー
井上がゴングと同時に前へ出て圧力をかける。ジャブ中心からの右とベーシックに戻すが、バトラーのガードを下げることはできない。
10R 井上10-9バトラー
ロープ沿いに回り込むバトラーをとらえようと井上が左ボディー、右ストレートを放つ。バトラーが右を打ってきたところ左フックから右を返すが、決定打とはならない。
11R
フラストレーションをはき出すようにゴング前から井上はステップを踏み、体を動かす。1分過ぎ強烈な左ボディーから連打。ようやく奪った初ダウンでバトラーは立てず。井上が4団体制覇を果たした。
井上尚弥が4団体王座統一 日本初
井上尚弥、史上9人目の4団体王座統一!バトラーにTKO勝利 日本初、バンタム級初の快挙
井上尚対バトラー 1回、バトラー(右)を攻める井上尚(撮影・鈴木みどり)
<プロボクシング:WBAスーパー、WBC、IBF、WBO世界バンタム級王座統一12回戦>◇13日◇東京・有明アリーナ 【写真】金のショートパンツ姿のラウンドガール WBAスーパー、WBC、IBF世界バンタム級井上尚弥(29=大橋)が史上9人目の4団体王座統一に成功した。WBO世界同級王者ポール・バトラー(34=英国)との4団体王座統一戦に臨み、11回1分9秒、TKO勝ち。世界ベルト4本をまとめる日本初、アジア初、バンタム級初の快挙を成し遂げた。なおWBA王座8度目防衛(IBF6度目、WBC初)となり、WBO世界スーパーフライ級王者時代の7度を抜き、自己最多防衛となった。 プロ転向後初の「出げいこ」で戦闘モードのスイッチを入れた。行き先は米ロサンゼルス。自ら希望した初めての海外スパーリング合宿だった。元世界6階級制覇王者マニー・パッキャオらを育成した名伯楽フレディ・ローチ氏が運営するワイルドカードジムを拠点に2週間滞在。WBA世界スーパーバンタム級1位アザト・ホバニシヤン(アルメニア)らトップの世界ランカーとスパーリングを消化した。ローチ氏や世界トップ級の選手の「目」の視線を浴びながらの緊張感ある実戦トレは、刺激しなかったという。 「トレーニングの内容どうこうではなく、とにかく環境を変えたかったので良い緊張感を保てましたね。ボクシングに対する『感覚』がすごく伸びました」と手応え。所属ジムが招聘(しょうへい)したフィリピン人パートナーを実戦トレ初日から倒す勢いがあった。元世界3階級制覇王者田中恒成(畑中)とのスパーリングし、最後はWBC世界バンタム級暫定王者の弟拓真との兄弟スパーリングで総仕上げ。「バッチリです。いいイメージでリングに上がれれば」と自信に満ちあふれながらバトラーと対峙(たいじ)していた。 「バンタム級最終章」と銘打った大一番を制し、同級最強を国内外に証明できた。「バンタム級は適正階級」としながらも、鍛え抜いた肉体は大きくなっているのも事実。すぐにスーパーバンタム級に転向することが濃厚で、同級での世界戦線をにらみながら、世界戦のチャンスを待つ。23年は井岡一翔に続く、日本人2人目の世界4階級制覇を目指す。
◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。元アマ選手の父真吾氏の影響で小学1年からボクシングを開始。高校時代にアマ7冠。12年7月にプロ転向。国内最速(当時)6戦目で世界王座(WBC世界ライトフライ級)奪取。14年12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得し、史上最速(当時)の8戦目で2階級制覇。18年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、国内最速(当時)の16戦目で3階級制覇。19年5月にIBF同級王座を獲得し、同年11月、WBSSバンタム級制覇。今年6月にWBC同級王座を獲得し日本人初の3団体統一王者に。身長164・5センチの右ボクサーファイター。
◆4団体統一王者 過去8人が達成し、井上は9人目。ベルトを1本ずつ獲得したのはミドル級のバーナード・ホプキンス(米国)、スーパーミドル級のサウル・アルバレス(メキシコ)に続き、バンタム級の井上が3人目となる。ただし王座決定戦を挟まず、現役王者4人からベルトを獲得したのは井上が初めて。バンタム級での達成も初となる。現役の4団体統一王者はアルバレス、ライト級のデビン・ヘイニー(米国)、井上の3人。
<プロボクシング:WBAスーパー、WBC、IBF、WBO世界バンタム級王座統一戦>◇13日◇東京・有明アリーナ