日本記者クラブ主催の党首討論が10月8日、日本記者クラブで行われました。時系列でハイライトを振り返ります。
発言要旨、党首討論会のポイントなどを解説(朝日新聞)
- 2017衆院選:朝日新聞デジタル
<リアルタイム解説>討論を終えて、見えたもの…
日本記者クラブ主催の党首討論が終了しました。衆院選と参院選の前に主要政党の党首が一堂に会し、政治姿勢や政策について突っ込んだ議論をする、恒例のイベントです。党首同士の論戦や、党首と記者の丁々発止のやりとりが見どころで、そうした議論の中から、選挙の構図がより鮮明になってくることもあります。
今回の討論はどうだったでしょうか。ポイントは、「安倍晋三首相(自民党総裁)の政治姿勢をどのように問うのか」と「政権選択選挙の受け皿はあるのか」の2点だったのだと感じました。
安倍首相は9月28日、臨時国会冒頭で衆院を解散しました。いわゆる「森友・加計」問題をめぐって丁寧な説明を尽くすとしつつ、所信表明演説も代表質問もないままの解散。首相はさらに、北朝鮮情勢が緊迫する中で政権の信任を問う「国難突破解散だ」と述べ、解散の正当性を主張しました。
こうした首相の手法が問われるとともに、党首討論でも主要な議題となった5年間進めてきた経済政策「アベノミクス」への評価、そして、消費増税とその使途変更の妥当性といった、経済・財政政策が大きな争点になるとみられます。また、党首討論では憲法改正のあり方について多くの時間が割かれました。首相が提案した「憲法9条に自衛隊の位置づけを明記する」という考え方への賛否は、各党首の間で分かれました。
一方で、公示を前にして誕生した小池百合子・東京都知事率いる希望の党が政権の受け皿を示せるかも、党首討論の大きな論点でした。具体的には、国民に政権選択を問う衆院選で、野党第1党として具体的な首相候補を示せるのかという点です。残念ながら、小池代表は記者からの質問に対し、明確な返答を避けました。
さらには、民進党分裂の過程で生まれた立憲民主党と、共産、社民両党との選挙協力を軸とした連携は、「安倍路線でも小池路線でもない」人たちに選択肢を示せるのか。こうした点も問われそうです。
10日公示、22日投開票の衆院選本番で、議論が深まっていくことを期待しています。
<リアルタイム解説>「勝敗ライン」引き上げなかった首相
選挙につきものなのが、「勝敗ライン」。今回の衆院選では、定数465議席を各党がどう分けるかで、その後の政治情勢が大きく左右されます。
安倍晋三首相(自民党総裁)は党首討論で「政権選択選挙だ。過半数を維持すれば政権を継続する」と述べ、自民、公明両党で過半数(233議席)を得れば、引き続き政権を担えるとの認識を示しました。ただ、9月28日の解散時、自公はあわせて323議席ありました。自公で過半数というラインはあまりに低い、という印象です。
討論で記者は「(自民党が)50議席減なら(首相の)退陣論がある」と指摘し、現実的な勝敗ラインを引き出そうとしましたが、安倍首相はラインを引き上げることはしませんでした。
自公で憲法改正を発議するために必要なのは、定数の3分の2にあたる310議席。13議席減というラインです。また、自公あわせて63議席減だと、衆院で17ある常任委員長ポストを自公で独占したうえで委員の数でも過半数をおさえる「絶対安定多数」を割り込みます。そのほかにも、自公あわせて244議席という、「安定多数」というラインもあります。
こうした様々なラインのどこに落ち着くのか。安倍首相の去就、政権の安定、政権交代――。あらゆる選択肢が、こうした数字によって起こりえるのです。
立憲に対立候補、小池氏「有権者に選択肢を示す」
希望の党が首班指名する候補を示していないことに再度質問が飛ぶ。記者が「公示日に出すのか。石破(茂)さんの名前も挙がっている。はっきりしてほしいとただした。
小池氏は「石破さんは自民党の方なのでそれはない。(大連立の後にといっても)しがらみ政治、一強政治をただすための選択肢をつくろうとしている。まずはしっかり戦う。そのうえでの判断になる」と述べた。
これに対し、記者は「一強政治を倒すならなぜ立憲に対立候補を出したのか」と重ねて質問。小池氏は「有権者に選択肢を示すためだ。ゴルフに例えれば今は右と左があって、真ん中がない。フェアウェーど真ん中を示すためだ。(自民党を利すると言っても)いろいろ足し算引き算がある」と反論した。
午後3時8分、党首討論は終了した。
勝敗ライン、安倍氏は与党過半数を改めて強調
話題は勝敗ラインに。自民の安倍氏に、自民党単独で過半数に達しなかった場合の連立政権の枠組みについて質問が飛んだ。
安倍氏は「いま(他党で)起こっていることは当選するための合従連衡だが、愚直に誠実に政策を訴え、実現のためには(与党の自公で)過半数をいただきたい」とかわす。
これに対し、記者が「80議席以上減らないと自公で過半数割れにならないが、自民党の中でも森友・加計隠し解散ではないかという指摘があり、50議席減なら退陣論がある」とただすと、安倍氏は「この選挙は政権選択選挙だ。過半数を支持すれば政権を継続する。政権を取れなければ敗北だ。前回、前々回は国民に大きな力をいただいて大勝利した。今回は10議席定員を減らした中での選挙だ。小泉政権での郵政選挙でも自公で過半数を掲げて選挙を戦っている」と述べ、勝敗ラインとして与党過半数を改めて強調した。
<リアルタイム解説>浮かび上がった「改憲の構図」
安倍晋三首相(自民党総裁)が悲願としている憲法改正。今回の衆院選は、今年5月に安倍首相が憲法9条に自衛隊の位置づけを明記する案を表明してから初めての国政選挙になります。
党首討論では、改めて各党首の立ち位置と大きな構図が見えてきました。
安倍首相主導で9条改正を目指す自民党▽憲法改正には前向きなものの「安倍首相案」には懐疑的な希望の党と、教育無償化を位置づける憲法改正に重点を置く日本維新の会▽安全保障法制を前提とした9条改正に明確に反対する姿勢を示している立憲民主党と、そもそも9条改正に反対の共産、社民両党――という大きな3極構造です。一方で、安倍政権で自民党と連立を組む公明党は、9条改憲には消極的です。
こうした状況を踏まえ、今回の衆院選では、安倍首相が打ち上げた憲法改正の是非が大きな争点と言えます。実際、共産党の志位和夫委員長は立憲民主、社民両党との選挙協力を進め、安倍首相主導の改憲論議にストップをかけたい考えを強調しました。3極構造の中で憲法論議がどのように進んでいくのか。衆院選の注目点になりそうです。
核燃料サイクルについて、希望の小池氏「廃炉ビジネスも重要」
希望の小池氏は、核燃料サイクル政策への姿勢について聞かれ、「今後のどのように原子力の技術を日本に残すのかも重要だ。廃炉ビジネスも世界で重要になってくる。(核燃料サイクル政策を)全部なくすことは技術者を育てないことなので総合的に考える」と語った。
北朝鮮問題、安倍氏「圧力」への理解求める
憲法改正についての質問が8党首に対して一巡した後、北朝鮮情勢に。安倍氏が「国難突破解散」と名付け、衆院解散に打って出た問題だ。
安倍氏は「北朝鮮という核保有国が、日本という非核保有国を脅したのは初めてのことだ」と述べ、「圧力」路線を強める政府方針への理解を求めた。
こころの中野氏「自衛隊を明記して安全防衛を守るべきだ」
こころの中野氏は「国連憲章で集団的自衛権は認められている。子どもたちにわかりやすい条文で自衛隊を明記して日本の安全防衛を守るべきだ」と語った。
立憲の枝野氏「今の安保法制は違憲」
立憲の枝野氏は「自衛隊は合憲です」と語った上で、自衛隊明記については「今の安保法制は違憲であり、自衛隊の明記でそれを追認する憲法改正には賛成できない。専守防衛を超えて集団的自衛権を一部を認める者は賛成できない」と述べた。
維新の松井氏「誰が総理でも憲法改正議論をすべきだ」
維新の松井氏は、維新が唱える教育無償化の改憲案について「財源があれば不要では」と主催者に問われたのに対し、「いま公立小中学校の教育は無償だがそれは憲法に書いているからだ。例えば民主党政権時代の子ども手当は政権が終わればなくなった。家庭の格差が教育格差にならない仕組みをつくるには憲法に明記する必要がある」と述べた。
松井氏はまた、「安倍政権の間に憲法を議論しないというのはあまりにも幼稚だ」と立憲や共産を批判。「今の国際情勢では誰が総理でも憲法改正議論をすべきだ」と語った。
社民の吉田氏「改憲反対の世論を広げたい」
社民の吉田氏は「国民は自衛隊の存在を災害救援などで認めている。しかし自衛隊を憲法に書き込むことはそれにとどまらない。安保法制で米軍と一緒に一体的に行動できる。そうなることを国民に丁寧に説明しないといけない。反対の世論を広げていきたい」と述べた。
共産の志位氏「超党派で安倍政権での改憲に反対」
憲法改正について共産の志位氏は「共産、立憲、社民で今回の選挙で連携したい。超党派で安倍政権での改憲に反対するという合意がある。枝野さんと憲法への考え方に違いがあるが、今の自衛隊を(安倍首相の主張のように)明記することは集団的自衛権を書き込むことになり反対と言うことでは一致している」と語った。
公明の山口氏「9条、自民党内の議論を見守る」
公明の山口氏は「9条について自民党内で議論が行われていない。我々は議論を見守る。大事なことは国会の憲法審査会で議論を深め、成熟した国民の理解のもとで国民投票を迎えるべきだ。まだそこまで至っていない」と述べた。
9条改正、小池氏「隊員の士気を高める情報公開を」
自民党政権で防衛相を務めた小池氏にも、9条改正をめぐる質問が飛んだ。小池氏は「憲法なので、国民の理解を得られるかはどの条項でも同じ。自衛隊という実力部隊について理解を得られるかについて、日報問題など信頼をそぐような行政ではなく、むしろ隊員の士気を高めていくような情報公開を進めるべきだ。安倍さんは9条に3項を加えるというが、自衛隊だけ取り出すと、防衛省との関係が逆転してしまうのでは。3項についてこのまま進めるのは大いに疑問がある」と反対姿勢を示した。
憲法改正について安倍氏「建設的な議論を期待」
質問は憲法改正に移った。自身が提案した改憲4項目について説明が不十分だと聞かれた安倍氏は「憲法論議は最後は国民投票によって決まるので、国民の間で深い議論が行われなければいけないとわたしは一石を投じた。自民党は公約で4項目に絞って示している。今後、国民や憲法審査会で建設的な議論が行われることを期待している」と述べるにとどめた。
安倍氏「籠池さんは私の友人ではない」
質問の焦点は、森友・加計問題に移り、自民の安倍氏に、「結果的に首相の友達を優遇した事に対して何も反省を語っていないのでは」と指摘した。
安倍氏は「李下に冠を正さずです。(森友学園の)籠池さんは私の友人ではない。加計氏については、戦略特区に獣医学部の新設を申請してきたのは加計学園のみでした。50年間まったく獣医学部が設立されなかったことがいいのか。鳥インフル、狂牛病という問題もある」と主張した。
さらに「私が私の友人であることをもって行政に優遇措置をしたならその通りだが、友人であっても影響力を行使していない。友人が戦略特区に関し疑いを持たれることは、私自身がもっと慎重であるべきだったと思うが、私が(加計学園を優遇すべく影響力を)行使したことは前川さん(元文科事務次官)を含めて誰も証言していない」と反論。
安倍首相はこの問題に関する報道ぶりも偏っていると指摘し、「ぜひファクトチェックをしていただきたい」と切り返した。
<リアルタイム解説>首相の発言に見る「アベノミクス」への意思表示
今回の衆院選では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の妥当性が問われそうです。東京都知事の小池百合子代表率いる希望の党が、新経済政策「ユリノミクス」を掲げたことも、議論を活性化させる可能性を秘めています。
こうしたことから、経済政策についての記者の質問は、安倍晋三首相(自民党総裁)と小池代表に集中しました。
安倍首相は改めてアベノミクスの5年間の実績を誇ったうえで、引き続き大胆な金融緩和と大規模な財政出動を柱とした経済政策を進めていく考えを示しました。財政健全化との両立をめぐっても、首相は「大切なことはしっかりと経済を成長させることだ」と述べました。引き続きデフレ脱却のための経済政策をすべてに優先させる、という政権運営を改めて示した格好です。
一方、ユリノミクスとは何なのか。アベノミクスとの違いはあるのか。そんな疑問が、小池代表にはぶつけられました。
小池代表は「消費者の共感を得る政策が重要だ」と語り、国民心理を含めて総合的なものだと説明しました。ただ、希望の党は結党直後ということもあり、ユリノミクスという言葉が先行している印象もあります。選挙戦を通じて、議論が深まっていくことを期待します。
異次元緩和について、安倍氏「出口戦略は日銀総裁に任せている」
アベノミクスの影響について記者は「異次元緩和の副産物が出ている。日銀が国債を大量にため込むなか、出口戦略をどうするのか」と質問。
安倍氏が「もし我々が政権を奪還せずにこの財政政策、金融政策を行わなかったら大変なことになっていた。当時、企業がどんどん海外に出て行った。日本に投資する会社なんかなかった」と述べたところで、記者がすかさず、「安倍さん、副産物を聞いているんですよ」とぴしゃり。
すると、安倍氏は「ちょどその各論に入るところだったんでね」と笑顔を見せ、「行き過ぎた円高を是正し、雇用を改善した。この後、出口戦略に移っていく。だがデフレ脱却していない段階で出口戦略に触れるのは時期尚早だ。どのような手段でデフレ脱却を達成し、出口戦略に向かっていくかという中身は日銀総裁に任せている」と述べた。
「ユリノミクス」について小池氏「マーケティングをベース」
記者から希望の小池氏に「ユリノミクス」について説明を求めた。小池氏は「マクロ経済というより、消費者に寄り添うマーケティングをベースにしたもの。デフレ経済からまだ脱却してない中で消費者にどう共感を得るか。税制などについて総合的な発想で、これまでの延長線上ではない政策を訴えいていく」と語った。
消費増税の先送りについて、安倍氏「大切なのは経済成長」
自民の安倍氏に対し、記者は消費増税の判断を先送りしているのは財政再建や社会保障の点から「邪道ではないか」と問うた。
安倍首相は「そういう批判は承知だが、すでに消費税率は5%から8%に引き上げている。大切なのは経済成長だ。腰折れして失業者があふれ税収が落ちれば財政再建もできない」と主張。その上で「これまで名目GDP(国内総生産)が増える時に税収が増えている。経済を見ながら消費税率を上げるべき時は上げ、上げるべき時でないときは上げない。税で大きな判断をするときは国民の判断を仰いでいる」と語った。
<リアルタイム解説>席順を決めるのは?
党首が座る席順には、前職の人数が大きくかかわっている。中心に座る安倍氏の向かって右隣に、小池氏。深いグリーンのスーツで臨んだ小池氏は時折安倍氏のほうに目をやり、落ち着いた口調だ。
アベノミクスに安倍氏「批判があるのは承知」
「アベノミクスが機能不全との指摘があるが」とのベテラン記者の質問に対し、安倍氏は「さまざまな批判があるのは承知している。しかし批判する方で代わりの政策を提示する人をわたしはほとんど知らない。今世紀最高水準の賃上げが続いている。学生が就職先を幅広く選べる状況になってきた」と応じた。
立憲の連携に、社民の吉田氏「まず、3党で3分の1を確保」
社民の吉田氏には立憲民主党との連携の可能性について質問が飛んだ。吉田氏は「(7日に発表された立憲の公約は)だいぶ社民党の政策と近づいてきた。まずは共産党含め3党で(選挙区への候補擁立の)すみ分けをして、改憲発議を与党ができない3分の1を確保し、その後にどう連携するか考えていきたい」と語った。
立憲の枝野氏、辺野古移設について「いまのやり方は強引」
米軍普天間飛行場を沖縄県内の辺野古に移設する政府方針への対応について聞かれたのは、立憲の枝野氏だ。「今の政府方針を変えるだけの材料を持っているわけではないが、検証が必要だ。いまのような強引なやり方では日米安保体制にかえって影響を与える」と語った。
<リアルタイム解説>希望の党の「首相候補」小池氏の真意は?
「首相候補」を提示せず、政権選択選挙を戦っていいのか――。希望の党の小池百合子代表(東京都知事)に対して、ベテラン記者から疑問が提示されました。
希望の党は小池代表が今回の衆院選への立候補を否定し続けており、党首が首相候補になりえないという状況です。憲法の規定で、首相は国会議員からしか選べないからです。
一方で、小池代表は今回の衆院選で党として誰を「首相候補」に掲げるのか、明確に打ち出していません。こうした状況について、記者は「フェアじゃない」とまで言い切りました。
こうした質問に対し、小池代表は新党を立ち上げたばかりで、まずは党の体制づくりを急いでいると説明。さらに、「無所属」の候補者も衆院選後に合流する可能性があるなどとして、選挙結果を見ながら、特別国会での首相指名選挙に臨みたいという考えを示しました。
小池代表の真意は見通せない部分がありますが、衆院選での自民党の獲得議席数によっては安倍晋三首相の政権継続をめぐって「政局」が起きる、というケースを視野に入れている可能性があります。自民党内がガタガタすれば、与野党をまたいで新たな政権の枠組みも考える。そのためには、首相候補を明確化せずに「フリーハンド」を得ておきたい――。そんな狙いも見え隠れするやりとりになりました。
維新の松井氏、希望の党との連携で「霞が関にプレッシャー」
維新の松井氏に「希望の党の登場で、日本維新の会に全国の広がりがなくなるのでは」との質問が飛ぶ。松井氏は「我々が5年前から訴えたことを小池さんはよく研究いただいている。大阪と東京でむだな争いは避けて、我々の政策を全国に広げようと。東京は全国に発信する力があるので、我々がやっていることを東京から発信し地方分権を実現していきたい」と強調。希望の党との連携について「人口減社会で身近なところで政策を実現するために、霞が関にプレッシャーをかけるために必要だ」と述べた。
「右に引きずられているのでは?」公明の山口氏の答えは…
公明の山口氏に「連立で公明党がどんどん右に引きずられているという指摘をどう思うか」との質問が飛んだ。
山口氏は「公明がいるから健全なチェックができる。右か左かは、左に立っている人は右に見えるだろうし相対的なもの。日本の抱える課題を乗り越えていかないと行けない。平和安全法制で言えば専守防衛の理念を曲げずにつくった。厳しい要件を科して憲法の規範性を担保できたのは公明党がいたからだ」と反論した。
小池氏、首相候補について「選挙の結果も見ながら」
記者から「政権選択選挙は首相候補を示すことで国民の審判を受けるもの。示さないままではフェアではない。なぜ出せないのか。ずっと出さないつもりか」と聞かれた小池氏。
「希望の党はできたばかり。党の態勢を整えていくのが一点。また無所属の方の参加の見込みもある。今後の選挙の結果も見ながら進めていく。過半数が233。私どもは安倍一強の政治をただすために有権者に選択肢をお示しするため候補者の最終調整に入っている。全員当選というわけではないが、最後の努力をしているところだ」と述べた。
記者「予想外の展開では?」に首相「はは」と一笑
第2部では、最前列に陣取るベテラン記者たちが党首らに質問をぶつける。
自民の安倍氏には、今回の突然の衆院解散に意義はあるのかと質問が飛んだ。
安倍氏は「衆院解散は私を含め与党議員が信を問われねばならない。政権交代するかもしれないリスクがあるが、あえて国民に問う。一つは北朝鮮の脅威、先般国連決議が採択され、だんだんきびしくなり、時を経ると事態は緊張する。強い外交力には国民の信が必要というのが私の4年半の経験だ。また、税金の使い道を問うことこそ民主主義だ」と述べた。
これに、「今回の解散で野党再編に注目が集まり、『勝てる』と思ったのでは。予想外の展開では」と安倍首相に問うと、首相は「はは」と一笑。「政治は大切なのは政策を前に進める強い情熱、難しい中での判断力、政策を実行する責任だ。この三点で今回の判断について揺らぐことはなかった」と語った。
<リアルタイム解説>第2部はベテラン記者からの深掘り
党首が別の党首に質問をぶつける「党首対党首」の時間が終わると、日本記者クラブのベテラン記者から、党首を指名して話題を深掘りしていく第2部に入ります。記者たちの「質問力」と、党首たちの「答弁力」が問われます。
<リアルタイム解説>「党首対党首」で見えた有権者への「一押し」
「党首対党首」の2巡目から3巡目。とりわけ3巡目では、各党首が有権者に響く「一押し」を仕掛けようと狙う話題を取り上げます。
共産党の志位和夫委員長は安倍晋三首相(自民党総裁)に対し、北朝鮮対応で米国と足並みをそろえて圧力一辺倒になるのは危険だという考えをにじませました。安倍政権の強硬姿勢を浮き彫りにするのが狙いのようです。日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)と志位委員長は、大阪府政への是非をめぐって応酬。大阪で対立する維新、共産の選挙区事情が影を落としているのではないでしょうか。
社民党の吉田忠智党首が提起したのは、やはり「森友・加計問題」でした。少し押し込まれた感のあった安倍首相ですが、志位委員長を指名して、自衛隊の憲法上の位置づけについての議論を仕掛けて反撃としました。公明党の山口那津男代表は、希望の党の小池百合子代表に質問。民進党の希望の党への合流をめぐるゴタゴタを浮き彫りにしようという狙いのようです。
山口氏が枝野氏に「合流したほうがよかったのでは」
公明の山口氏は立憲の枝野氏を指名。「民進党が希望の党への合流を決定したのに、小池さんに排除されて新しい党をつくられたように見える。1カ月前に前原さんを代表に選び、枝野さんは代表代行に就いた。政策信念を貫くなら合流したほうがよかったのでは」と水を向けた。
枝野氏は「新代表を決めた民進党大会で一致してやっていこうと前原さんが言った。そんな簡単にいかないだろうと思ったが、やはり難しかった」と吐露。「だったら足元に光をあてる政治勢力がなくなるわけにいかないと立ち上げた」と結党の理由を述べた。
ここで党首同士が質問をぶつける第1部が終了した。
自民の安倍氏と共産の志位氏が「自衛隊論争」
自民の安倍氏は共産の志位氏に対し、「共産党はいまも自衛隊を違憲と言っている。政権に参加して違憲と答弁すれば自衛隊法は無効になる。代わりの組織をどう考えるのか」と指摘した。
志位氏は「自衛隊と憲法9条は両立しないというのが共産党の立場は堅持する。現実を一歩一歩改革するのがプランだ。我々が参画する政権ができれば、政府の憲法解釈は圧倒的多数の国民の支持で自衛隊を解消するまでは合憲ということで今の政府解釈を引き継ぐことになる」と語った。
安倍氏「妻についてはわたしが十分話をしている」
社民の吉田氏は自民の安倍氏に森友・加計問題で昭恵夫人や加計学園理事長を国会で説明させる考えはあるかと聞いた。
安倍氏は「わたしが何度も国会で説明した。わたしが関わっていないことを何度説明しても理解していただけない。再び機会を求められれば国民の前で説明していきたい」とかわした。
すると、司会者が「吉田さんが聞いた昭恵夫人と加計さんの説明については」と重ねて聞いた。すると安倍氏は「妻についてはわたしが十分話をしている。加計氏はご本人が決めるであろう」と述べるにとどめた。
北朝鮮への軍事力行使、安倍首相は直接答えず
共産の志位氏は自民の安倍氏に、「対北朝鮮で先制的な軍事力行使は破滅をもたらす。これは絶対にすべきでない」とただした。
これに対し、安倍首相は直接答えず、「北朝鮮には約束を裏切られ、話し合いを時間稼ぎに使われて核・ミサイル開発がここまできた。すべての選択肢がテーブルにあるという米国の方針を支持する。そうしたことも含め北朝鮮に圧力がかかっている」と述べた。
立憲の枝野氏、原発事故の整備不足を指摘
立憲の枝野氏は、原発事故の際の広域避難計画の整備が不十分だと指摘。自民の安倍氏は「広域避難計画は自治体任せではない。責任を持ってともに作成していきたい」と語った。
安倍氏、司会者にたしなめられる
自民の安倍氏が公明の山口氏を質問相手に指名すると、司会者が「与党内はなるべく控えて」とたしなめる場面も。
安倍氏は「国政政党の代表を都知事が務めるのはどう思うか」と質問。公明党が東京都議選で小池氏側を支援したことを念頭に置いた質問だ。
山口氏は「東京五輪・パラリンピックは国と東京都の共通テーマとして成功させないといけない。国政では自民と公明で結束して連立政権にいささかの揺らぎもない。東京では都民の期待を担う小池氏が国と協力して成功させてほしい」と説明した。
枝野氏「消費税・原発」について説明
こころの中野氏は立憲の枝野氏に質問。「立憲は菅内閣そのものの政党。消費税引き上げ、原発対応。その菅内閣を信任するようなものだ」と与党然とした質問をぶつけた。
枝野氏は「菅内閣のときの対応が100点だったとは思っていない。至らないところがたくさんあった」としつつ、「だからこそ原発ゼロを掲げている。消費税についてはあの時点における経済状況、3党合意を勘案したが、今は税のバランスが崩れており、前提が崩れている。意見が変わるのは当然だ」と切り返した。
<リアルタイム解説>「党首vs党首」のハイライトは?
各党首が一通り冒頭発言を行った後は、党首が党首を指名して質問をぶつける方式で進みます。党首らの思惑が見え隠れする時間帯で、興味深いです。
「党首対党首」の一巡目は基本的に、野党的な立ち位置の党首は安倍晋三首相(自民党総裁)に質問をぶつけました。反対に、与党的な立ち位置の党首は、衆院選を前に台風の目となっている希望の党の小池百合子代表(東京都知事)の「穴」を指摘しようとしているようです。
安倍首相に対しては、学校法人「森友学園」「加計学園」をめぐる問題、沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題、日本経済に対する現状認識――といった論点がぶつけられました。小池代表に対しては、民進党からの合流組が安全保障関連法を容認しているのか、都知事としての築地移転問題への対応の透明性はどうなのか――などが問われました。
ハイライトは、安倍首相から小池代表への質問です。希望の党が公約に掲げた消費増税の凍結。これについて、安倍首相は財源をどうやって手当てするのか、という疑問を提示しました。持続可能な社会保障制度の構築と財政再建、その財源としての消費増税――というテーマは、今回の衆院選でも大きな争点のひとつになりそうです。
維新の松井氏、野党の選挙協力に「水と油」
維新の松井氏は、大阪での共産など野党の選挙協力を念頭に「他党と水と油なのに」と批判。共産の志位氏は「大阪で維新がやっている事はあまりにひどいので、現実的かつ柔軟に対応している」と返した。
社民の吉田氏は、原子力規制委員会が4日に東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働の前提となる安全審査で事実上の「合格」を出したことについて「反対なら希望の党と共闘できる」と秋波を送った。これに対し、希望の小池氏は「希望は2030年に脱原発を目指すが、今回、規制委員会が総合的判断としており、(その場合の)再稼働は是としている。老朽化とあわせて判断したい」と応じるにとどめた。
ノーベル平和賞に安倍氏は…
共産の志位氏が、自民の安倍氏に質問。国際NGOの「ICAN」がノーベル平和賞を受賞したことについて「被爆国の日本が核の傘にしがみついて背を向けていいのか。被爆者の声をどう受け止めるか。(日本が不参加の)核禁条約にサインすべきでは」と問うた。
安倍氏は「政府内でも議論した。日本には核なき世界をつくっていく責任がある。残念ながら核保有国は条約に強く反対している。現実に結果として核廃絶に向かうには保有国の賛同を得るかたちでの国連決議が必要だ。核抑止力を否定してしまっては日本が日本の安全を守りきることができない」と説明した。
与党同士、秋波を送り合う
公明の山口氏は、自民の安倍氏を指名。「公明党の公約にあって自民党にないものは私立高校生の授業料の実質無償化推進だ。いかがか」と尋ねた。
安倍氏は「全世代型の社会保障に変えていく。どんなに貧しい家庭に育っても高等教育が必要な子どもたちに提供するため、年内に2兆円のパッケージをまとめる。いまご指摘のあった私立高校生の授業料無償化についても検討していきたい」と理解を示した。野党への批判姿勢とは対照的に、与党同士で秋波を送り合った。
公明の山口氏、小池氏に「安保・憲法」投げかける
公明の山口氏は、希望の党が民進党出身の候補を多く抱えることについて小池氏に質問。小池氏は「安保関連法制について反対していた人もいたが、候補者を募るにあたり安保や憲法に関する問いを投げかけた。いま北朝鮮情勢が厳しい中でリアルな政治を進めていこうということで一致している」と述べた。
こころの中野氏、小池氏に民進党との合流ただす
社民の吉田氏は沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題について、自民の安倍氏に質問。安倍氏は「まず過度に沖縄に米軍の基地が集中する現状は変えないといけない。北部演習場など過去最大の返還をした。住宅地に囲まれた普天間飛行場を辺野古に移す。できる限り沖縄の負担軽減に力を尽くしたい」と述べた。
こころの中野氏は、希望の小池氏に民進党との合流について、「(小池知事の)都政同様に密室政治、ブラックボックスではないか」とただした。小池氏は「民進党からは合流ではなく、政策が一致した方が入り、新しい政党ができあがった」と述べた。
小池氏が安倍氏に「森友学園や加計学園」ぶつける
希望の小池氏は自民の安倍氏を指名し、森友学園や加計学園の問題での説明責任を問うた。
安倍氏は「丁寧に説明をしてきたが足りない点は反省する。しかし私から言われたという人は1人もいなかった。(国会の)予算委員会での説明で納得していただいたのではないか」と語った。
続いて、共産の志位氏が安倍氏に衆院解散の理由を質問。安倍氏は「森友、加計隠しではない。北朝鮮の脅威の中で圧力を高めて解決する方針を示し、月に来日するトランプ大統領などにリーダーシップを持って示したい。また少子高齢化で今年中に方針をまとめないと間に合わない中で、消費税の使い道を決めないといけない」と説明した。
<リアルタイム解説>「30秒間アピール」から見えてくるもの
討論冒頭、各党首がフリップを出しながら、今回の衆院選でもっとも言いたいことを短く説明しました。各党の立ち位置がよくわかる滑り出しだと思います。
安倍晋三首相(自民党総裁)は「この国を守り抜く」。首相は今回の解散を「国難突破解散」と位置づけ、圧力重視の北朝鮮政策を信認してほしいと訴えています。自民党は、政権公約でも北朝鮮対応を前面に掲げました。東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、これまで5年近く安定政権を維持してきた安倍内閣の継続が必要なんだ、という考えです。
これに対し、希望の党の小池百合子代表は「国民ファースト」「希望」という言葉を使い、大勝した7月の東京都議選を意識した発信手法のようです。新党としてフレッシュさで自民党と勝負、ということでしょう。
公明党の山口那津男代表、共産党の志位和夫委員長は、両党の個性がよく出た訴えです。山口代表は公明党が力を入れる「教育」を掲げ、志位委員長は「反安倍政権」を強く訴えかける姿勢です。
教育を重視するのは、日本維新の会の松井一郎代表も同じです。維新の一丁目一番地である「身を切る改革」も訴えに入れています。立憲民主党の枝野幸男代表は「まっとうな政治」を掲げました。民進党が希望の党に合流する過程で、小池代表による「排除の論理」が立憲民主党立ち上げの契機になったことを強く意識した発言のようです。
社民党の吉田忠智党首は護憲の立場を強く打ち出し、日本のこころの中野正志代表は保守色の強い訴えで、各党のカラーがよく出ていると思います。
知事が2人、「元議員」も
小池氏は東京都知事、松井氏は大阪府知事と、国政政党の党首8人のうち2人の知事が並んだ。また、吉田氏は昨年7月の参院選で落選した元参院議員。
各党首が「30秒間アピール」
討論の冒頭で、各党首が衆院選で最も訴えたいことをパネルに自筆して、順に30秒間アピールした。
自民党総裁の安倍晋三首相「この国を守り抜く」
希望の党の小池百合子代表「国民ファーストの政治で日本に希望を」
公明党の山口那津男代表「教育負担の軽減」
共産党の志位和夫委員長「安倍暴走政治に退場!」
日本維新の会の松井一郎代表「身を切る改革で教育無償化」
立憲民主党の枝野幸男代表は「まっとうな政治」
社民党の吉田忠智党首は「憲法を活かす政治」
日本のこころの中野正志代表は「自主憲法の制定」など
8党首が出席、党首討論始まる
衆院選の10日公示を前に8日午後1時過ぎ、党首討論会が日本記者クラブで始まった。自民党総裁の安倍晋三首相、希望の党の小池百合子代表、公明党の山口那津男代表、共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男代表、日本維新の会の松井一郎代表、社民党の吉田忠智党首、日本のこころの中野正志代表の8党首が出席した。
<リアルタイム解説>今日の見どころは?
日本記者クラブ主催の党首討論では、ベテラン記者たちから各党党首に質問が飛びます。衆院選公示を10日に控え、さまざまな政策や政治手法などに対する党首たちの立ち位置が見えてくるので、有権者の判断の参考にしてもらいたいと思います。
今回の討論のポイントは、安倍晋三首相が投げかけた9条改正をはじめとした憲法改正への各党のスタンス▽消費税率の10%への引き上げの是非や使途についての党首たちの考え方▽北朝鮮情勢が緊迫する中で衆院解散に打って出た安倍首相の判断の妥当性――などが挙げられます。そのほかにも、「あれ?」という話題が出てくるかもしれません。注目です。