岸信夫防衛相の評価がうなぎ上りだ。最近では、政府が東京と大阪に設置した新型コロナワクチンの大規模接種センターでの架空予約報道をめぐって、ニュースサイト「AERA dot.(アエラドット)」を運営する朝日新聞出版と、毎日新聞に対して厳重抗議した。
それも形だけではない。
産経新聞によれば、「ワクチン接種を希望する65歳以上の方の機会を奪い、ワクチンそのものが無駄になりかねない悪質な行為だ。厳重に抗議する」と強い言葉だった。
両社は「架空の接種券番号で予約できた」と入力を試したうえで、予約システムの不備を指摘した。実際には、架空の番号では接種できないが、それでも、予約自体が混雑している状況では、岸氏が言うように、正規の予約を妨害する結果になりかねない。
マスコミに批判されると、すぐ「不備を改修する」などと腰砕けになっても、おかしくないところだったが、岸氏は「短期間でシステム(の改修)を実現するのは困難だ」と、きちんと反論した。完璧なシステム構築に時間をかけるより、国民の命を守るワクチン接種を急ぐという判断だ。
政治家が、こうした気骨ある対応を見せるのは珍しい。久々に痛快だった。
私が最初に注目したのは、4月17日に岸氏が行った日本最西端の沖縄県・与那国島への視察である。
この日はどういう日だったか、と言えば、米ワシントンで16日(日本時間17日)、日米首脳会談が開かれていた。会談の共同声明には、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と書き込んだ。
与那国島は台湾から、わずか110キロしか離れていない。岸氏はそんな最前線の島に降り立って「わが国の安全保障にとっても、国際社会の安定にとっても、台湾の安定が重要」と強調した。