文春砲!東芝社長電撃辞任の裏に西麻布の密会?東芝は国が救え!

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東芝社長電撃辞任の裏に西麻布の密会? 

巨大企業の内紛はいつまで続くのか

 東芝の車谷暢昭社長が辞任した。東芝は14日、臨時取締役会を開き、車谷氏の辞任を受理した。東芝は7日に英投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズから買収提案を受けていることを明らかにしたが、車谷氏は東芝会長に就任する前、CVC日本法人の共同代表を務めており「利益相反」が指摘されていた。

「文春砲で炎上する前に逃げ出そう、という判断だろう」

車谷社長 ©️文藝春秋

起死回生を狙った車谷社長だったが…

 4月13日午後10時、テレビ東京が「東芝14日臨時取締役会車谷社長の進退協議」という独自ニュースを流すと、投資家の間でこんな憶測が駆け巡った。2時間後、NHKと日経電子版が「車谷社長が辞任」と速報を流した。

 投資家が言う「文春砲」とは、本日配信の週刊文春電子版に掲載された「東芝取締議長が辞任勧告 東芝社長に疑惑の西麻布密会」という記事。東芝に買収提案したCVCの日本法人に、かつてともに在籍していた車谷氏と東芝社外取締役の藤森義明氏が、西麻布の紹介制ワイン・バーでしばしば「密会」しており、ガバナンス(企業統治)に甘い車谷氏に対して東芝の取締役会が4月6日に取締役の辞任を勧告していたことを報じている。このバーにはCVC日本法人の現社長、赤池敦史も顔を見せており、3人が同席することもあったという。

 辞任を勧告したのは東芝の社外取締役で取締役会議長の永山治氏(中外製薬名誉会長)だが、車谷氏は勧告に応じず、次の日の朝、日経新聞の一面トップに「英ファンド 東芝に買収提案へ」の記事が出た。業界では「追い詰められた車谷氏が日経にリークした」という見方が専らだ。

 CVCに買収されれば東芝は上場廃止となり、この数年、車谷氏を責め立ててきたアクティビスト(物言う株主)を追い出せる。アクティビストを追い出せば経営の主導権を取り戻せる。車谷氏はCVCによる買収を「起死回生の一発」と考えたのかもしれないが、結果的には墓穴を掘る形になった。

2017年以降強まった“物言う株主”による東芝経営陣への攻撃

 これまでの経緯を簡単に説明しておこう。海外原発事業の失敗などで巨額損失を計上した東芝は2017年、債務超過を回避するため6000億円の増資に踏み切った。増資を引き受けた海外の株主の中には、多くのアクティビストが含まれていたが、背に腹は代えられない状況だった。

 予想通り、物言う株主は東芝経営陣への「攻撃」を強めていく。その一つが「村上ファンド」の流れを汲むエフィッシモ・キャピタル・マネジメント(シンガポール)による「2020年株主総会が公正に開かれたかどうか調査せよ」という株主提案だった。同総会では一部の株主が期日前に郵送した議決権がカウントされておらず、東芝の総会運営の公正さに疑問が持たれていた。

 東芝は「総会の運営に問題はなかった」と主張したが、3月18日に開かれた臨時株主総会では、エフィッシモの株主提案が賛成多数となり、独立の弁護士による調査が始まることになった。上場企業の最も重要な意思決定の場である株主総会で不正があったことが発覚すれば、車谷氏ら経営陣のクビは間違いなく飛ぶ。この時点で既に車谷氏の社長の座は風前の灯だった。

車谷氏は「東芝のCEOとして不適格」という判断

 12人で構成する東芝の取締役会は、車谷氏と綱川智氏を除く10人が社外。CEO(最高執行責任者)ら会社の執行部で株主の利益を増やす方向で経営しているかどうかを取締役会が監督する米欧型になっている。永山議長をはじめとする取締役会メンバーは藤森氏との不適切な関係に代表されるガバナンスに対する車谷氏の脇の甘さと、確固たる成長戦略を打ち出せない経営者としての能力に疑問を持ち、アクティビストとの円滑な対話もできない車谷氏に対し「東芝のCEOとして不適格」という判断に傾いた。

藤森社外取締役 ©️時事通信社

 そして4月6日、永山氏らは車谷氏に前述のように事実上の「辞任」を勧告する。その晩、西麻布の件のバーでは、額を寄せ合って話し合う車谷氏と藤森氏の姿が目撃されている。そして次の日の朝、日経新聞の一面を飾ったのが「CVCから東芝への買収提案」というスクープ記事だった。

永山氏に直撃インタビュー

 東芝経営陣の間で何があったのか。4月11日、筆者は永山氏を直撃した。

――4月6日に永山さんが車谷さんに取締役の辞任を勧告したため、慌てた車谷さんがCVCの買収提案をリークしたと言われています。

永山氏「そんな話を誰から聞かれましたか」

――情報源は言えませんが、確かな筋の情報です。

永山氏「そうですか。私からは何も申し上げられません」

――CVC出身の車谷さんがCVC最高顧問の藤森さんと節度を超えた付き合いをしていることが投資家の間で問題視されています。

永山氏「あの2人の関係は東芝に入る前からだと聞いています。藤森さんが社外取締役になった後、車谷さんとどんな付き合い方をしていたかは知りません。ただ一般論としては、CEOと社外取締役が節度を超えた付き合いをするのは由々しきことだと思います。私もいくつかの会社で社外取締役をやっていますが、その部分のけじめには十分な注意を払っています」

――CVCからの買収提案はどう受け止めていますか。

永山氏「まだ具体的な条件は何も示されていないわけで、東芝にとっては『何もない』に等しい状態です。我々は『何もない』という前提で淡々と東芝を経営していくだけです。投資ファンドの人たちは『あの事業は売却したら、いくら』『この事業はいくら』と、とかく事業に値段を付けたがりますが、実際の経営はそんなものではない。我々は、東芝には世の中の役に立っている素晴らしい事業、将来性のある素晴らしい技術がたくさんあると思っています。それを活かしていくのが我々の仕事だと思います」

 今回の買収提案騒動に実はなく、追い込まれた車谷氏の「狂言」に限りなく近い。それを言われるままに一面トップで報じた日経の見識も問われるところだろう。「買収提案」が報じられた後、東芝株は3830円から4595円にまで急騰している。車谷氏が辞任したあと、買収話が尻窄みになり株価が下落すれば、日経報道を信じて東芝株を買った人々は浮かばれない。

©️iStock.com

 車谷氏を東芝社長に強く推したのは経済産業省だ。今回のCVCによる買収提案でも、外資による買収の障壁になる改正外為法をくぐり抜けるために、経産省が裏で動いていた節がある。そもそも、経営危機のきっかけとなった海外原発事業の促進を東芝に勧めたのも経産省である。その技術力、社員の優秀さには定評のある東芝だが、経産省の言いなりになっている限り、この会社に明るい未来は訪れそうにない。

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