3月に臨床試験終了へ、抗寄生虫薬「イベルメクチン」はコロナ治療薬3例目になるか
北里大学大村智記念研究所感染制御研究センターは、抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、
新型コロナウイルス感染症の治療薬としての臨床試験を2021年3月にも終了し、
製造元の米製薬大手MSDに試験結果を提供する。
MSDは効果を検証しながら、承認申請を検討する見通しで、
新型コロナの治療薬として認められれば、抗ウイルス薬「レムデシビル」とステロイド薬「デキソメタゾン」に続き、3例目となる。
臨床試験を取りまとめている花木秀明センター長が方針を明らかにした。
イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬だが、エイズウイルス(HIV)やデングウイルスへの効果が報告されている。
ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)の複製やたんぱく質生成を阻害するほか、
サイトカインストーム(免疫暴走)を抑制する作用が期待される。
米ブロワードヘルスメディカルセンターの研究では、イベルメクチンの投与により、
新型コロナ重症患者の致死率が80・7%から38・8%に改善した。
イベルメクチンは駆虫薬として、19年には世界で4億人以上に投与され、大きな副作用は確認されていない。
新型コロナへの治療薬としては、インドやペルーなど29カ国で研究が続けられている。
花木センター長は「日本ではイベルメクチンの知名度が低いが世界では駆虫薬として知られ、
新型コロナの治療効果の検証が進んでいる」と説明。
「日本でも新型コロナ治療薬としての可能性を広く知ってもらい、試験を進めたい」と述べた。
イベルメクチンは、寄生虫によって引き起こされる「オンコセルカ症」の治療に使われる。
オンコセルカ症は目のかゆみや発疹などが生じ、失明に至ることもある。
イベルメクチンのもととなる化合物アベルメクチンの発見により、
北里大学の大村智特別栄誉教授は15年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。