衆院東京15区補選は、島根1区、長崎3区とともに16日告示、28日に投開票される。告示前の気の早い話だが、現時点での予測について私見を書こう。
東京15区はカオス状態だ。それは自民党内の政局の大混乱の結果でもある。本コラムでは、政治資金の還流(キックバック)問題は、岸田文雄政権が仕掛けた安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)潰しであるという立場だ。安倍晋三元首相が暗殺された後、旧統一教会問題があったが、これも裏返せば安倍派潰しの様相だった。
岸田首相は、首相になってから何がやりたいのかと問われ、「人事」と答えたというが、要するに政治闘争だったわけで、今になってみれば合点がいく。
もしこの政治闘争がなければ、二階俊博元幹事長が衆院選不出馬に追い込まれることもなく、東京15区は小池百合子都知事が出馬していた可能性もある。これに自民党と公明党が相乗りして圧勝し、小池氏は勝利への貢献で自民党へ復党というシナリオもあり得た。現実は、二階氏が「引退」なので、小池氏は自民党へ復党できるめどがなくなり、15区で出馬するメリットもなくなった。
その結果、乙武洋匡氏が無所属で出馬し、自民党は支援を検討することとなった。昨年12月の東京・江東区長選では、これに公明党と国民民主党が乗ったが、今回は乙武氏の過去の女性問題などもあって未知数だ。
立憲民主党は酒井菜摘氏が立候補を表明した。共産党も小堤東氏を立てていたが、立民と一本化すると発表した。
日本維新の会は金澤結衣氏、参政党は吉川里奈氏、日本保守党は飯山陽氏、無所属で秋元司氏、須藤元気氏が出馬予定だ。
自民党内政局が招いたカオスだ。選挙戦の行方を予測するのは現段階では困難であるが、あえて大胆な前提でやってみた。有権者数43万人で投票率6割、25万票の争奪戦となる。
乙武氏の基礎票は昨年区長選の得票率から10万票程度だろう。しかし、収賄などで有罪判決が出ている元職の秋元氏に3万票食われ、公明党支持者から2万票が逃げると5万票となる。自民党内のガタガタぶりもマイナスで、小池氏の応援も期待薄と筆者はみている。
酒井氏は、共産党と一本化して、基礎票は昨年区長選から6万票程度だが、須藤氏に2万票食われると4万票となる