「飯山博士」ではなく、「主婦・飯山あかり」の肉声が街行く人々を振り返らせる。彼女の演説のうまさは、保守党の特別顧問で元仙台市長の梅原克彦さんも認めている。
身内を褒めるのはこのぐらいにして、そもそも、なぜ保守党が初陣を東京15区に定めたかを語ろう。
新規参入の政治団体にとって、衆院の小選挙区を戦って勝つことは至難の業だ。「なのになぜ?」とよく聞かれるが、答えは主に5点ある。
第1は、百田尚樹(ベストセラー作家)、河村たかし(名古屋市長)両代表がともに「勝負師」だからである。「地盤もカネもないが、とにかく一丁やろうやないか」と最初から2人の意見は一致していた。「われわれは評論家の集団じゃないんだから」と。
第2は、東京15区がまさに「政治腐敗の象徴」のような状況になっていたからだ。同区では、自民党衆院議員が2代続けて「政治とカネ」の問題で逮捕・起訴された。これを座視しては、「政治の家業化をやめよう」を公約に掲げる団体としての名が泣く。
そして、第5の理由は、ここで初めて明かすが、「小池百合子都知事との戦い」をわれわれが望んでいることだ。これには少々説明がいる。
現在、小池氏には2つの選択肢がある。
1つは、7月7日投開票の都知事選で3選を目指す道。もう1つが、かねてから取り沙汰されている東京15区補選へのくら替え出馬である。
メディアの報じ方を含め、東京15区が「小池氏の出世の踏み台」のように扱われることは噴飯ものだ。加えて8年前、江東区・豊洲をさんざん風評被害にさらした本人が一体どんな顔をして「江東区の代議士」を目指すというのか。
いずれもひどい話だが、こういう「小池政治」は現代の政界の一つの象徴といえる。これを何とか止めたい。
そのために、私たちは「4月の衆院補選」と「7月7日の戦い」を併せた、二段構えでのロードマップを考えてはいる。
とはいえ、勝算があるわけではない。相手は巨象、私たちは「蟷螂の斧」だ。「Go for broke(当たって砕けろ)の精神」と言ったら嘲笑われるだろうが、それでも意志なきところに道はない。
かつて、石原慎太郎元都知事は「東京から日本を変える」と言った。
私たちにまだその力はないが、「日本を豊かに、強く」するためにも、首都・東京で死闘を演じて、必ずや爪痕を残したい―。
東京15区から始まる日本保守党の新たな挑戦のストーリーに、ぜひともご注目いただきたい。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。