打っては打率4割を超え、投げては開幕戦で先発し、決勝戦で9回を抑えた。大谷翔平(28)で始まり、大谷で終わった今大会。彼が侍ジャパンに与えた影響を、現地で取材を続けてきた鷲田康氏がレポートする。

「憧れるのをやめましょう。今日、超えるために、トップになるために来たんで」

 アメリカとの決勝戦を前に、選手たちに勇気を与えた大谷投手のメッセージはまだ記憶に新しい。

「ただでさえ素晴らしい選手たちのラインアップを見るだけで、そういう気持ち、尊敬のまなざしが、逆に弱気な気持ちに変わってしまうというケースが多々ある。その中で今日1日だけは、その気持ちを忘れて対等な立場で、彼らに勝つんだという気持ちを、みんなで出したいと思いました」

格の違いを見せつけた大谷


 後に本人が語った狙い通りに、選手たちはアメリカに怯むことなく立ち向かった。先制を許したが村上宗隆内野手(23)と岡本和真内野手(26)の本塁打などで逆転すると、最後は日本の武器の投手力を生かす7人継投で、ダルビッシュ有投手(36)から大谷へとつないで逃げ切った。

大谷に衝撃を受けた村上(右)と岡本

 振り返ってもあの大谷の言葉が侍ジャパンの1つの拠り所となり、メジャーのスター軍団を撃破する力となったと思う。大谷だからこそ語れる言葉、大谷が語るからこそ説得力があった言葉だった。代表での大谷翔平の存在感を改めて痛感させたエピソードの1つである。

 そして、この言葉の力だけでなく、大谷の存在そのものが選手に勇気を与え、侍ジャパンを変貌させていった大会でもあった。