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2023年2月17日号:百田尚樹さんの「ニュースに一言」

2023年2月17日号:百田尚樹さんの「ニュースに一言」

●2月14日はバレンタインデーでした。女性から男性へ愛のしるしとしてチョコレートを贈るこの日は66歳のオッサンには関係ない(と言っても全然モテなかったわたしは若い時も常に蚊帳の外でしたが)日ですが、朝からチョコレートの数を皮算用して胸躍らせた男性も多かったのではないでしょうか。
ところがそんなバレンタインデーも随分と様変わりしているようです。マーケットプレイス運営会社のアンケートによるとプレゼントする対象の第1位は「パートナー」を抑え、なんと「家族」だというのです。そして第3位には「自分」(これをプレゼントというのでしょうか、ただの買い食いのような気もしますが)、以下友人同僚と続きます。さらにその相手は男性に限らず女性や、中には「ペットへ」なんて人もいてわたしのイメージする“ワクワクドキドキ”のバレンタインと全然違います。
もっともバレンタインデー発祥の欧米では、この日は単に「愛の日」として恋人同士はもちろん、夫婦や家族など愛する人すべてを対象にしていますので、ようやく本来の姿に近付いただけなのかもしれません。そもそも「この日だけは女性から告白できる」なんて「女が告白なんて、はしたない」という時代だからこそ貴重なのであって、女性からのアプローチも当たり前の現代にはそぐわないものです。そしてチョコレートを贈るというのも神戸の洋菓子店「モロゾフ」の創業者が1936年に売上アップを目論み、新聞に「バレンタインデーにはチョコを!」と掲載した広告にイベント好きの女性たちが飛びついたものですからロマンチックでも何でもない起源です。
外国から持ち込まれすっかり定着したイベントはバレンタインデーのほかにもあります。しかし、いずれも本来のものとかけ離れた日本独自のものに変わっています。キリストの生誕を静かに祝う“クリスマス”は三角帽子を被ってクラッカーを鳴らし、から揚げとケーキを食べる日。秋の収穫を祝い先祖の霊をお迎えするとともに悪霊を追い払う“ハロウィン”は若者が仮装して街に繰り出しバカ騒ぎをする日など元々の意味はどこかに行ってしまいました。
そんな光景を見た外国人たちは「日本には変わった祭りがあるな」と思うだけで、それがクリスマスやハロウィンだと気付いていないかもしれません。
 
 
●高齢ドライバーによる事故の増加を受け、一定の違反を犯した75歳以上の高齢者に「運転技能検査」が課されるようになりましたが、その実施状況が警視庁から発表されました。それによりますと昨年5月13日から12月末までの7ヵ月半にのべ7万7083人が受け、合格者は6万9041人だったそうです。この数字を見て「高齢者の10人に9人はしっかり運転しているんだ、思ったより多いな」と思うのは早計でしょう。なぜならこの検査は不合格になっても何度でも受け直すことができるからです。極端な話、受検者全員が1回目は不合格で複数回受検していた可能性もあるのです。ですから延べ人数とその中での合格者の数ではまったく本質を表すことが出来ないのです。本当なら“のべ”ではない総受検者数、1回での合格者、2回目での合格者・・・、最後までダメだった人の公表でないといけないのです。そして恐ろしいのは初回から9回連続信号を見落とし不合格になっていた受検者が10回目にちょうど対面の信号が“青”だったため停止の必要がなく完走すれば合格になってしまうことです。この人はもし11回目を行なえばまた信号無視で失格するのに、11回目の必要がないため晴れて免許更新となるのです。
こんな人が「お墨付きをもらった」と大手を振って公道に出てくるのですから危ないことこの上ありません。本当に安全を担保するための検査なら受検回数に制限を設けるか、あるいは3回連続の合格のみ可とするなどしないといけないでしょう。福岡県では高齢者講習を受けていた妻を迎えに運転免許試験場を訪れた81歳の男性がバックで駐車しようとした際にアクセルとブレーキを踏み間違えて試験場玄関に突っ込む事故が起きています。どう考えても講習を受けるべきは妻より夫の方ですが、この男性もれっきとした免許保有者なのです。
現代では衝突を避ける自動ブレーキや車線外れの修正、ブレーキとアクセルの踏み間違いへの対応など運転ミスを補う装置の付いた安全運転サポート車(サポカー)も販売されています。彼がもしサポカーに乗っていたら今回の事故はありませんでした。「運転技能検査」も結構ですが、能力の衰えが不可避の高齢者にはもっと積極的にサポカーへの乗り換えを促すべきでは。「運転技能検査」と同じく昨年5月13日に新設されたサポカー限定免許へ2022年中に切り替えたのは全国でたったの14人です。
 
 
●窃盗の疑いで兵庫県姫路市に住む31歳のブラジル国籍の女が逮捕されたというニュースがありました。窃盗犯とはどろぼうのことですが、彼女が盗んだものはなんとパトカーといいますから驚きです。
この女は、滋賀県に住む姉に自宅のある姫路まで送ってもらっている途中、なにが気に入らないのか突然わめきだし、さらに注意した姉の肩を殴るなどしたそうです。とても手に負えないと思った姉は「妹とけんかをした」と110番通報しました。ほどなくして車を止めていた加東市山口の国道372号沿いに、警官1人がミニパトに乗って到着しました。女は抵抗することなく素直にミニパトの後部座席に座りましたが、ここからがいけません。警察官が署に連行しようとミニパトの車外で無線連絡していたところ、女はするするとパトカーの車内を移動して運転席に座り発車してしまったのです。そして女は赤色灯を付けたまま国道372号線を丹波篠山市方面に約10キロも逃走しました。
ミニパトを盗られた署員は110番する(警官も困ったときには110番するんだ)とともに、姉の運転する車に乗り大急ぎで追いかけました。かくして、赤色灯を灯した妹のミニパトカーを一姉の一般車両が追跡するという、なんとも奇妙な光景が展開されたのです。そして約12分後に渋滞に巻き込まれ停止したところでようやく捕まえましたが、パトカーを乗り逃げされたこの警察官は大目玉を食らったことでしょう。
調べに対し女は「盗んだのではなく、借りただけ」と犯意を否認しているそうですが、なんという身勝手な言い訳でしょう。百歩譲ってブラジルではそれで済んでも日本では「貸して」に対し「いいよ」がなければ借りたことにはなりません。
 
 
●京都市右京区にある東映太秦映画村のお化け屋敷で、お化け役の演者をケガさせた男性が映画村の運営会社を相手取り約550万円の支払いを求めて京都地裁に提訴したというニュースがありました。???
加害者が「金払え」と訴えるなんていったいどういうことでしょう。この49歳の男性は2011年9月(当時37歳)、社員旅行で映画村を訪れ「史上最恐」を謳うお化け屋敷に入りました。映画村のお化け屋敷は「史上最恐」というだけあってその怖さは折り紙付きです。なにしろ日頃本物そっくりに映画のセットを作っている職人が屋敷を作り、お化けもアルバイト学生ではない本物の役者が扮して脅かしにかかるのですから。
そこにやってきたのが今回の男性です。プロのお化けの迫真の演技で恐怖におののいた男性はパニック状態になり、思わずお化けのあごを蹴ってしまいました。いきなり反撃されたお化けもさぞかし驚いたでしょうが、なにしろ相手が悪かった。なんとこの男性は空手5段の強者で、お化けは一撃で骨折などの重傷を負ってしまいました。それにしても、いくら「史上最恐」とはいえ所詮は作り物です。それに対し本気で反撃するなんて、どうやら彼は鍛錬により屈強な肉体を作ることはできても、お化けを恐れないたくましい精神を作ることはできていなかったようです。男性は、警察から事情聴取を受けましたが刑事処分はなく、男性演者に謝罪し治療費などを支払うことで一件落着しました。
ところが大ケガをした演者側はその後の15年3月に男性相手に損害賠償請求を起こしたものですから大変です。自身が空手の達人で素人にケガをさせたことを悔いていた男性は解決金約1千万円を支払うことで16年3月に和解したそうですが、彼にしたら「なんで自分だけが1000万も払わなければならないの」と、ずっと腹の虫がおさまらなかったのでしょう。事故から12年も経っていくらかでも取り戻そうと今回提訴したようです。
訴状で男性は「双方の安全のため客とお化け役の間に十分な距離や仕切りを確保する必要があった」「恐怖に陥った観客がどのような反応をするかは予想できず、とっさに手を出すことは十分あり得るのでお化けに注意喚起が必要だった」と運営会社の安全配慮義務を主張しています。しかし、サバンナのライオンの前には怖くて立てなくても動物園のライオンの前は平気なのと同じで、しきりは明らかに恐怖を取り除くものです。そんなものがあっては「お化け屋敷」なりません。さらに客を警戒してオドオドしているお化けなんて怖くも何ともありません。
男性の主張は恐ければ怖いほど値打ちがあるお化け屋敷を真っ向から否定するものです。もし、男性が勝訴すれば各地のお化け屋敷にはこんな注意書きが掲げられることでしょう。『当お化け屋敷のお化けの中身は人間ですから怖がる必要はありません。けっして怖がって殴らないでください』と。こんな「史上最低」のお化け屋敷にはだれも行きません。
 
 
●1945年8月6日、広島に投下された原子爆弾は一瞬で多くの人々の命を奪いましたが、悲劇はそれだけでは終わりませんでした。九死に一生を得たと思った人もその後、長きにわたって原爆症に悩まされることとなったのです。国は被爆者援護法に基づき、原爆が投下された際に爆心地にいたり、後になって爆心地に入り放射線を直接浴びた人に対し、がん検診などの健康診断を無料で実施するほか各種手当の交付などの援護をしています。その人数は戦後77年を経た今もまだ11万人以上を数えるなど、いかに原爆の威力が大きく恐ろしいものだったのかがわかります。
そんな中、被爆者の子供、いわゆる広島原爆2世の28人が「被爆2世が親の遺伝的影響を受けることは否定できない」のに被爆2世を被爆者と区別して援護対象としていないのは、平等権を保障する憲法14条に違反するとし、国に原告1人あたり10万円の支払いを求めて起こした裁判に対し、広島地裁が国の賠償責任を認めず原告側の請求を棄却したというニュースがありました。
放射線被曝が悪性腫瘍(がん)や白血病の発病に大きく関与することは知られています。被爆2世の中には、その病気により親(被爆者)を見送った人も多いことでしょう。そんな2世が「親の血を引いている自分もいつか発症するのでは」と不安になる気持ちはわかります。彼らにしてみれば身体の中に時限爆弾を抱えているのと同じでしょう。しかし、今回の判決は国側の「親の被爆による次世代への遺伝性影響は確認されていない」を支持しました。では、2世の中にがんや白血病になった人はいないのでしょうか。もちろんそんなことはなく単に「影響は確認されていない」すなわち「因果関係が明確でない」と言っているだけです。それで死ぬまで不安が続く被爆2世が、長崎投下分を含めてまだ全国に20万から30万人もいるのですから改めて原爆がいかに非道な兵器だったのかがわかります。
  • 「因果関係が明確でない」・・・全国で超過死亡数が大幅に増加している最近よく聞く言葉です。専門家の中にもその原因がコロナワクチンにあると指摘する声がありますが、国は頑として「因果関係が明確でない」と突っぱねます。しかし、ワクチン接種後、突然亡くなったり原因不明の不調に悩まされる人がいるのは事実です。さらに厄介なのはそれがいつまで続くのかわからないことです。アメリカに落とされた原爆で被爆2世を強いられた人と、自ら進んで接種して異変に見舞われた人とを同列にはできませんが、彼らもまた不安を抱えて生きていかなければなりません。数年後、あるいは数十年後原爆同様に「国が保障しろ」との訴訟が各地で起こらないか心配です。もっともそれでもそれは「因果関係が明。確でない」で片付けられるのでしょうが。いまはこの心配が杞憂に終わることを願うばかりです

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