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炭谷銀仁朗、楽天への電撃トレードは巨人の恩返しか?

炭谷銀仁朗、楽天への電撃トレードは巨人の恩返しか

【柴田勲のセブンアイズ】

スポーツ 野球 2021年7月6日掲載

 

 巨人が首位・阪神との差をジワジワと詰めている。先週、今コラムを記している段階では2.5ゲーム差だったが、いまは(5日現在)1.5である。

 4日は阪神がデーゲームで広島に敗れていたため、巨人が神宮でのDeNA戦に勝てば勝率で4月1日以来の首位だった。1点差まで迫ったが、結局はDeNA戦今季12試合目で初黒星となった。

 首位奪取は6日以降に持ち越しとなったものの、6日に巨人が中日に勝利し、阪神がヤクルト戦に負ければ首位に立つ。

 よく、「追われる者よりも追う者が強い」という。本当は3ゲーム差くらいでじっくり食いついていって、ここぞとなったら一気に追い抜いて引き離しにかかり、戦意を喪失させるのがいい。あまり早い段階で首位に立つと、今度は「追われる立場」になってしまう。

 シーズンは長い。まあ、そう理想的にことは運ばない。勝負事は特にそうだ。焦る必要は全くない。一戦一戦、大事に戦っていけばいい。

 阪神躍進の原動力だった新人・佐藤輝明がここにきて苦しんでいる。阪神の失速とリンクしている。4日の広島戦では5三振を喫した。これはプロ野球タイ記録となる9イニングで1試合5三振、セ・リーグの新人野手では初という。

 相手投手も研究と対策を重ねている。高い壁にぶち当たっている。今後、これまでみたいにブンブン振り回してあくまでも長打を狙うか。それともミートを心がけて、ヒットの延長線上に本塁打があると思うか。どうやって乗り越えていくかは本人次第だが、19本塁打を放ってチームをけん引してきたのは事実で、「佐藤効果」への評価は不変だと思う。

 炭谷銀仁朗捕手(33歳)が金銭トレードで楽天に移籍することになった。発表されたのがDeNAとの試合中で、しかも交換要員なしだったことで波紋を呼んでいる。

 想像するに、炭谷の方から原辰徳監督に、「もっと試合に出たい。巨人がいいのなら(他球団に)出してもらえないですか」と相談しており、そこに楽天サイドから打診がありまとまったのではないか。

 炭谷は原監督の希望で、18年のオフにFA移籍してきた。今季は44試合に出場していたが大城卓三の台頭もあって先発マスクは18試合だった。2軍から戻ってきた小林誠司の起用も増えている。

 選手というのは試合に出たい。それなりの実力を持っていながらベンチを温める。イヤなものだ。鶴岡一人さんは、「ベンチに金は落ちていない。グラウンドに落ちているから拾え」と言ったものだ。

 私にも覚えがある。1968年、川上(哲治)監督から、「スイッチを止めてまた右に戻ってくれ」と命令された。高田(繁)が68年に入団し、川上さんは1番に起用しようと考え、5番打者の役割が回ってきた。前年にスイッチで打率.287、本塁打18本、70盗塁をマークしていた。正直70盗塁の私になぜ長打を求めるか分からなかった。

 ところが、ある試合でスタメンから外され代わりに相羽(欣厚)※が入った。試合後、川上さんに、「なぜ相羽を使う。オレの方がもっと打つし活躍する」と直訴した。翌日、スタメンに戻った。

 交換要員なしにもうなずける。巨人と楽天の「きずな」だろう。楽天とのトレードはこれで6件目だ。ゼラス・ウィーラー、高梨雄平は欠かせない戦力として働いているものの楽天に移籍した巨人の選手はいまひとつ精彩を欠いている。恩返しの意味合いも含んでいるのではと思う。

 炭谷にとってもいい移籍だ。楽天の捕手は31歳の足立祐一が最年長で太田光24歳、田中貴也28歳、下妻貴寛27歳らがいる。炭谷はパ・リーグでの経験が豊富で、出場機会は確実に増えるし、自身がこれまで培ってきた経験を他の捕手に伝えることができる。優勝を狙う楽天には大きな戦力だ。

 移籍したからにはぜひ活躍してほしい。

 ただ、今回のトレードで気がかりなのは万が一、大城がケガをした時だ。まずは小林がマスクをかぶるだろうが、いかんせん打力が弱い。打てなさ過ぎる。岸田行倫にある程度メドが立ったということも今回のトレードに関係しているのだろう。今後は小林よりも岸田の起用も増えていくような気がする。

 エース・菅野智之投手が東京五輪の出場を辞退した。1日の広島戦(東京ドーム)で18日ぶりに1軍復帰登板となったが、3回途中4失点でKOされた。

 ストレートの球速はほとんどが140キロ台前半でコントロールも悪く、本来の出来とは遠かった。本人は「無理をしない」だし、原監督も「無理をさせない」という状況なのだろう。

 独特の力強さがなければ、躍動感も見られなかった。これは2、3年前から徐々に出ていた傾向だ。何度も指摘するが変化球でかわす投球が目立つ。それに右ヒジの違和感、また痛みでもあるのか。

 いま、投手陣はもちろん、打撃陣もうまく回っている。この際である。じっくりとコンディションを整えてほしい。8月にはその右腕が必要不可欠となる。

 ※相羽欣厚(あいば・よしひろ)中京商業高(現中京大中京高)から62年に巨人入団、外野手、右投右打。南海(73年~)、阪神(75年)。巨人のV9時代は代打として活躍、65年に4試合4番に座った。88年他界。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

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