中国アリババグループ創業者のジャック・マー(馬雲)氏が「2カ月以上、公の場に姿を見せていない」と欧州のメディアが続々と報じている。
アリババ傘下の金融会社で、マー氏が事実上経営権を握るアント・グループの新規株式公開(IPO)を翌月に控えた2020年10月24日、上海で開催された会議で、マー氏は中国の金融規制システムについて、
「バーゼル合意は老人クラブ(old people's club)のようなもの。未来を規制するために昨日の方法を使うことはできない」
と指摘し、健全なイノベーションを阻害すると批判。マー氏の発言を受け、中国の習近平・国家主席は、アント・グループのIPOがもたらすリスクを調査するよう、当局に個人的に指示したと伝えられている。
この動きが、同時期からマー氏が公の場に姿を見せていないことと関係しているとの見方も出ている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、マー氏はその後、アント・グループの一部を譲渡すると申し出て、中国政府との和解を画策。
11月2日には「国が必要とするなら、アント・グループが所有するどのプラットフォームを利用してもいい」と規制当局に提案したものの、結局、同3日にIPOは中止された。
翌12月、中国の規制当局はアント・グループに対し、「ルーツであるオンライン決済事業に立ち戻り、他の金融サービスについては銀行の資本規制の対象となる別の持株会社を設立するよう命じた」(WSJ、2021年1月4日)。
さらに、中国当局は独占禁止法違反の疑いでアリババの調査にも乗り出している。
イギリスの大手メディア、テレグラフやメールオンラインは1月3日、マー氏が設立した「ジャック・マー財団」が支援するアフリカの起業家育成コンテスト「アフリカズ・ビジネス・ヒーローズ」の審査員から「不可思議なことに」突如として外れ、同ウェブサイトの審査員ページからもマー氏の画像が削除されたと報道。
さらに、アリババの広報担当が「他のスケジュールと重なった」ことを審査員降板の理由として挙げた、と報じた英フィナンシャル・タイムズに対し、上記のメールオンライン記事は、マー氏が8月20日のツイッター投稿(下に引用)で「(コンテストの)ファイナリストらと会う日を待ちきれない」と熱意を示していることの矛盾を指摘している。
(文:川村力)
アリババ創業のジャック・マー氏が行方不明?
「中国の金融規制は老人クラブ」批判が原因か。欧州メディア報道