欧州連結性フォーラム 安倍総理基調講演

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 皆様、おはようございます。今日、この場に立てることを大変うれしく思っております。
 先ほど、御紹介いただきましたように、私はニューヨークの国連総会に出席し、昨夜遅くブリュッセルにまいりました。
 私は、もうブリュッセルには何回も日本の総理大臣としてお邪魔させていただいておりますが、おそらく日本の総理大臣としてブリュッセルを訪問した回数としては最高の数になっているのではないかと思います。
 ユンカー委員長にこの会議への参加を誘われた時、私は、断る理由を一つも見つけられませんでした。
 お受けするわけなら、三つ、すぐに思い浮かびました。
 第一点、ほかでもないユンカー委員長のお誘いだったということであります。
 委員長とは、大きな仕事を成し遂げることができました。委員長と、ドナルド・トゥスク議長、そして私は、日本とEU(欧州連合)を代表し、時代を画す文書に調印いたしました。2018年7月17日のことでありました。
 実はその頃、私はブリュッセルにいる予定でした。時あたかも、大水害が西日本を襲います。
 だったら晋三、ぼくらが行くよと二人は言い、東京へ来てくれました。これは、ジャン=クロード、感激でありました。
 三人が署名した文書の一つは、新時代にふさわしい実質を備えたEPA、経済連携協定。もう一つが、SPA、戦略的パートナーシップ協定でした。
 歴史的文書の、調印です。それを延期などしたくないと、二人は東京に来てくれたのでした。
 EPAとSPAは、日本とEUを未来へ推し進める車の両輪です。EPAは、世界GDP(国内総生産)の約3割、世界貿易の約4割をカバーする、世界最大級の自由な先進経済圏を新たに生み出しました。
 日本の消費者は、ワインやチーズの値段が下がったのを見て、効果を実感しています。日本のGDPは約5兆円、1パーセント押し上げられ、新たに生まれることが見込まれる雇用は29万人と、少なくありません。
 グローバリズムへの反動が散見される中、日本とEUはいまEPAを結び、自由貿易の旗手として、自らを先頭に押し出しました。
 そこには、守り抜かねばならない価値へのコミットメントがあります。
 その点を述べて明快なものが、もう一方の日EU・SPAでした。つくづく思います。このSPAというもの、あとでまた述べますが、近代の、150年になんなんとする時代を経て、皆さま方と日本人が到達した高みを、そこからはるばる見晴るかす眺望の広がりを、物語るものです。
 つまりはEPAとSPAの重みが、私をここへ連れてきた理由の第二点目です。
 三点目、そして最後の理由は、ジャン=クロードがコネクティビティを共通議題にした動機を、私なりに考えてみたところによります。ここからは、以上述べましたところに肉付けをします。初めに、SPAのこと。そのあとコネクティビティについて思うところを述べた上、EUと日本に何ができるかの具体論に踏み込みます。
 お集まりの皆さま、価値や原則が揺らぎ、漂流しかねない当節、ユーラシアの両極をなすEUと日本が結んだSPAは、高らかな宣言をもって始まります。
 日本とEUが、戦略的パートナーとして、長期的で、深い協力を続けることができるのは、価値と、原則を分かち合っているからである。それが基礎をなしているからだと、そういう宣言です。
 どんな価値で、原則か。SPAは民主主義を一義に挙げ、次いで法の支配、人権、自由を掲げました。
 日本とEUには、それゆえ無限の可能性があると、SPAのロジックは進みます。
 あらゆるレベルの協議、あらゆる共通の関心事項についての共同行動をする意思を明記したSPAは、どこまでも、未来を志向しています。
 あらゆる可能性に、日EU・SPAは、確固たる法的基盤を与えました。
 価値を分かち合い、原則を共にする私たちなら、SPAという箱に何であれ盛り込めるというわけで、条文は、40もの分野を列挙しました。宇宙から海洋に及ぶ全圏域で、軍縮であれテロ対策であれ、何でもできる設計です。
 日本と欧州、思えば長い曲折を経て今日に至ります。
 いまや同じ旗の下、共通の価値を奉じる、ふたつの頑丈な柱です。双方の人々は、支え合って世界をよき場所とするのだと、そんな決意ができるまでになったのです。
 日本とEUを、自由貿易の旗手にしたEPA、普遍的価値のガーディアンとしたSPAの2つは両々あいまって、もし世界が大洋を行く船ならば、どんな揺れをも中和するスタビライザーの役割を果たします。
 このほどEUと日本との間に、連結性パートナーシップの約が相成ることとなったのは、その具体的表現にほかなりません。
 望ましい連結性が満たすべき要件については、つとに日本が開いたG7(先進7か国首脳会議)とG20(金融世界経済に関する首脳会合)が、普遍的な、およそ誰もが守るべき基準を明らかにしました。
 いまEUと日本はパートナーシップを結び合い、これから先頭切って、そのスタンダードを自ら行い、他の模範になろうとします。
 これからのインフラは、質の高いものでなくてはなりません。必要なのは、サステイナブルで、偏りがなく、ルールに基づいたコネクティビティです。
 そのコネクティビティを、いま口にすると、道路や港湾など、物理的なインフラが眼に浮かびます。
 コネクティビティ、と二度目に口にするときは、ダイナミズムを思います。
 陸に、海に、空、宇宙、サイバースペースに、人が動き、資金と物が移動して、知識と情報が激しく飛び交うという。
 ところで白状しますが、私は、ルクセンブルクの小さな町シェンゲンが、あの有名な協定発祥の地だというだけでなく、ワインの名産地だったとは、最近まで知りませんでした。
 そこで今度はジャン=クロードのもっとも好きな、シェンゲンの白ワインでも味わうように、コネクティビティという言葉を舌に転がしてみます。すると気づくのは、その味わいです。
 何しろコネクトのネクトはラテン語のネクト―、バインドするに語源をもちます。コネクトのコンが、一緒に、それも、とことん一緒にという意味ですから。
 コネクティビティの語源に遡り、そのもつダイナミズムや物理インフラを思った私たちは、いまやこんなふうに言えるでしょう。
 EPA、SPAをもつEUと日本は、徹底的に結束している。
 陸と海という無辺の領域に、また空、宇宙、サイバー空間で生じるダイナミズムを正しくマネージするのは、揺るぎなく立ってこれら圏域を支える、日本とEUという二つの大黒柱でなければならない。
 民主主義を奉じ、法の支配を重んじて、人権と、自由を守る点にかけて不動の決意を共にする者同士、どんなガバナンスが望ましいか、ルールを設けるならどんなものにすべきかを、熟考し、実行していく責めを負う。
 道ひとつ、港ひとつにせよ、EUと日本が手掛けるなら、インド太平洋から西バルカン、アフリカに至るまで、持続可能で、偏りのない、そしてルールに基づいたコネクティビティを造ることができます。
 ただつなげるのでなく、良くつなげるコネクティビティを、もたらすことができるのです。
 もちろん、日本と欧州を結ぶコネクティビティを確かなものにするには、地中海、大西洋へとつながる海の道、インド・太平洋が、自由で、開かれたものでなければならないことは、言うまでもありません。
 本フォーラムは副題で、持続可能な未来のため、いくつもの橋を架けるのだと言っています。
 日本とEUならそれが可能だというところ、具体例で見てみましょう。
 ユンカー委員長が一般教書演説で西バルカンに言及し、将来におけるそのEU加盟に言及したのは、確か2017年でした。
 かくいう私も、2018年の1月、バルト諸国に加えて西バルカンを訪れ、両地域に、定期的対話の枠組みや、協力のイニシアティブをこしらえました。
 バルト三国には、今日本の各界が熱い関心を寄せています。政治レベルの対話と、企業間の交流が、パラレルで進むようになりました。
 一方、西バルカン協力イニシアティブの下、日本政府は最近この地方を専門とする移動大使を置きました。
 また例えば、セルビアに対し2017年9月日本が実施した支援は、セルビア最大の火力発電所が出す煙を、劇的に浄化するものでした。
 西バルカン協力イニシアティブはまた、災害への抵抗力をどう高めるかについて、西バルカン各国の行政官たちと、この分野に豊富な知見をもつ日本人専門家との交流を可能にしました。
 西バルカンの若者を日本へ招くプロジェクトも現在進行中です。先ごろ来日したコソボのハシム・サチ大統領と夕食を共にし、改めて思ったことは、あれほどの戦乱をくぐった旧ユーゴスラビア諸国が続ける復興と成長の努力は、実に気高いものだということです。
 EUと日本は力を合わせ、西バルカンへの協力に精出さねばと、私は決意を新たにいたしました。
 バルト諸国にしても同様で、EUと日本の協力にとって格好の場所となるでしょう。
 頑強で、繁栄する欧州は、世界の利益にかないます。譲れない価値を高く掲げるEUが、一体性を増し強くなるなら、これほど日本の利益にかなうことはありません。
 目を、アフリカ大陸に転じます。
 例えばブルキナファソの綿花は、加工場に行き、ギニア湾の港に行って、大西洋から世界に出ていきます。その間の道路が問題です。
 質の高い道路ができたら、内陸国ニジェールにも役立ちます。西アフリカ全体の経済が、恩恵を受けます。
 まさにその、質の高い道路を、今EUと日本が力を合わせて建設中です。
 ブルキナファソのこの例は、アフリカ各国で私たちが進める協力のひな型となるでしょう。
 ひと月前、私の政府が開いた第7回アフリカ開発会議で、集まってくれた40を超す各国指導者に対し日本は約束をしました。
 質の高いインフラを提供し、債務の罠に陥らない支援に尽力するということをです。これは、EUがアフリカに対してなす約束と寸分違わないでしょう。
 日本政府はこれから、アフリカで重点国を毎年10か国選び、向こう3年、延べ30か国の担当者に、公的債務やリスク管理の研修をします。ガーナとザンビアには、債務管理とマクロ経済運営のアドバイザーを送ります。
 運輸、通信、電力から、データの信頼ある自由流通、そして宇宙に至るまで、全ドメインでコネクティビティを提供できるのは、私たち、EUと日本です。
 金融のつけ方にも、シビル・ソサエティの蓄積にも、EUと日本には、一緒にやったとき、測り知れない相乗効果をつくる力がある。試しましょう。やってみようではありませんか。
 最後に申します。日本ではいま正に、ラグビー・ワールドカップが佳境に入っています。残念ながら、ルクセンブルクの代表は出ていませんが、多くの国々が熱戦を展開しています。
 10月22日には、天皇陛下の、御即位の式典があり、各国から、指導者の皆様に御参加いただきます。
 そして来年を迎えると、オリンピックとパラリンピック。2025年にはワールド・エクスポ。皆様の、御訪問を待っています。
 それは日本人に、ひとつ、不変の真実を教えてくれます。
 コネクトし合ってこそ、人は人足り得る。コネクトされたとき、社会と国家は、強くなる。コネクティビティとは、人と社会、国家を、未来へつなぐ大きな橋だという真実です。
 しかもいまや、EPA、SPAに結ばれた日本と欧州は、未来へのいくつもの橋を、協力し合ってつくることができます。
 ジャン=クロード、日本人を、これほど心丈夫にしてくれることはありません。夜間、大洋を行く船の乗員が、僚船の舷灯を頼もしく思うのに近い感じだといったら、お分かりいただけるでしょうか。
 ジャン=クロード、ここまで我々が歩んだ道のりとその達成に、誇りを抱きます。これで、私のスピーチを終えさせていただきたいと思います。

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Source: 首相官邸ホームページ

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