そして今年3月28日、谷口選手と母親は、日本レスリング協会、強化本部長だった栄和人氏、相手選手らに対し、計2億2600万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
今回、谷口選手の母親が「週刊文春」の取材に応じ、レスリング協会の対応に疑問の声を上げた。事故当時、レスリング協会が選手を「スポーツ団体保険」に加入させていなかったことはすでに明らかになっている。
「最初の手術を終え、病院に支払いをした際のことです。協会が主催した合宿での事故なので、私はてっきり協会が払うものだと思っていました。しかし協会の方が栄さんに聞いたら、『お母さんに払ってもらえ』と。正直、何でだろうと思いました。これまでの治療費は全て私が支払っています」
谷口選手親子の心情を深く傷つけたのが、協会幹部の言動だ。
「合宿の責任者だった栄さんは、一昨年の12月に一度だけ、お見舞いに来られました。『おー、俺のこと知ってるか』と息子に声をかけ、リハビリ室に入ってきました。こちらが恥ずかしくなるような態度で、『頑張れよ』とだけ言って、5分程度で帰られました。正直、来ないでくれた方が良かったと思ったくらいです」(同前)
母親は、訴訟の理由を次のように語った。
「誰も事故の状況をきちんと説明してくれないし、おかしな対応が続いています。今の病院もいつかは出なければいけません。同じような障害の方にお話を聞く中で、途方もない金額の治療費などがかかることもわかりました。今回の裁判で責任の所在を明らかにし、きちんとした補償を受け、息子の人生が再スタートできるようにしたいと考えています」
栄氏は、「週刊文春」の取材に「谷口君の見舞いも2,3回は行きましたし、会話もしました。手術代だって私が指示するわけないじゃないですか」と答えた。
社会人選手が所属するALSOKは「まだ訴状が届いておりませんので、内容を確認次第、対応を検討してまいります」と回答。レスリング協会は、訴状が届いてないことを理由に、「回答は控えさせていただきます」と答えなかった。
4月11日発売の「週刊文春」では、谷口選手の母親が事故当時の状況、谷口選手の置かれた状況、そして協会の対応について詳細に語っている。