文藝春秋3月号の特選記事を公開します。(初公開 2019年2月25日)
「どうも、よろしくお願いします」
都内某所の対談会場に入ってきた鶴瓶さんは、初対面の私に向かって、まるで昔からの知り合いであるかのように人懐っこい笑顔を浮かべた。
「文藝春秋」1月号からスタートした対談連載「松本人志 Creator×Creator」。第2回の対談相手として登場したのは、笑福亭鶴瓶さんだった。鶴瓶さんといえば「誰とでも親しくなれる」達人。一方の松本さんは「人見知り」で知られている。
そんな対照的な2人が、顔をあわせることとなった。
さすがは鶴瓶さん。松本さんの到着を待つ間に他愛もない雑談が始まった。私はベストセラーとなった『遺書』の連載担当をはじめ、かれこれ30年近く松本さんと仕事をさせていただいている。そのことを鶴瓶さんに伝えると、「それなら松本と、食事も時々行くん?」という質問が。「一度もない」と答えると、とても驚かれた。
松本さんが会場に到着すると、すかさず「なんで行かへんねん」とツッコミを入れる鶴瓶さん。すると松本さんが私を見て一言。「そんな、ねえ。そんなんじゃないっすもんね」。がーん。ずっとファンなのにー!(泣)
笑いに嫉妬がない
そんなこんなで始まった対談。松本さんが「生まれかわったら鶴瓶さんになりたい」と公言しているのは有名な話だが、その“リスペクト”を感じる場面があった。
松本 鶴瓶さんって、人間何回もやってる感じがします。普通1回とか2回、犬とかをはさむじゃないですか。それが5回くらい人間やってるから、悟ってるんですよね。
鶴瓶 おもしろないと思うもんは、おもしろないけど。
松本 出る杭を、絶対打たないじゃないですか。僕も基本的には打たないですけど、でもやっぱり「ちょっとそこまで出てこられても」って、若手に思う時期もあったから。
鶴瓶 そんなに出てくるやつおらんやろ?
松本 でもやっぱり若いときは、多少ね。鶴瓶さんはずっと、笑いに対して嫉妬がない。