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文春:“人気者の気配”を消した、いきものがかり・水野がすごい――近田春夫の考えるヒット

『THE GIFT』(平井大)/『ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花』(鈴木雅之)◆絵=安斎肇 平井大の『THE GIFT』は何に影響されてるんですかね? そんな編集からの問い合わせに、俺もそこ…

“人気者の気配”を消した、いきものがかり・水野がすごい――近田春夫の考えるヒット

3/20(水) 11:00配信

文春オンライン

『THE GIFT』(平井大)/『ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花』(鈴木雅之

平井大の『THE GIFT』は何に影響されてるんですかね? そんな編集からの問い合わせに、俺もそこまで全方位的には音楽をチェックしていない身のゆえ、役に立つような回答は無理かとも思ったのだが、とりあえず候補を二つほど示せてホッとしているところだ。ビージーズかエリック・クラプトンは入ってるよね? 過去のヒット曲をそこそこ覚えている人間なら誰だってすぐ分かりそうな、結構素直なパクリもといオマージュでした。

それよりさあ。これたしか幼児向けのアニメ用の筈だが。やたら大人な音じゃんさ。そのあたりの気配りてぇのはどーなってんのよ。そんな危惧を抱かざるを得なかった私だ。

つまり、いくらなんでも彼等の保護者の女たちとも思しき層の“琴線”狙い撃ち! のし過ぎじゃね!? と。そう老婆心ながらにも(こういう時にこそ使いたい修辞である)思ってしまったのです。

ま、今どきの餓鬼にはこのぐらい“ませた”jpopがお似合いかてェのも(そもそも俺にしてからが、幼稚園のころ既に、童謡がかったるくって、んなもん歌えるかって感じで流行歌ガンガンにシャウトしてたくちなんで)、一方にはあるんですけれどもね、ハイ。

それはさておきそんななか。鈴木雅之(feat.伊原六花)の曲なのだが、これが業界の最近の通例に反して、如何にも――タイトルからして――職業作家の書いた然とした印象なのだ。それで気になって、誰なのかいなと調べてみると、なんとあーた、詞曲とも! いきものがかりのひとだった。

といって俺はそのことに意外と意外性は感じられなかった、いや、むしろ納得させられた格好だ。というのも……。

正直、最初はグループ名といい“大小学生”とでも呼びたくなるような絵面といい、なんだか子供がアマチュアくさいフォークソングでもやってるんだろうと思い込んでしまっていた(いや、騙されていたが正しいのかなぁ?)。それが何かの曲を聴いたのをキッカケに、ひょっとして実は多種の楽曲を書き分けられる仕事師の集団なのではないかと、そう疑うように(?)なっていたところだったからだ。

時に、俗にいう“人気者”が誰かに楽曲を提供する場合、相手に合わせて作ることは――ユーミン中島みゆき桑田佳祐といったお歴々を思い起こしていただきたい――まずない。常のこと、お願いした側が、届けられた曲なり歌詞なりをおしいただくカタチでの採用以外に道はないのである。ところが、そういった意味で、この水野良樹の仕事にはまったくといっていいほど“人気者の気配”というものがない。あくまで鈴木雅之の側の思惑に沿って注文に応えて書き上げたとしか思えぬ、見事職人に徹した“納品”ぶりなのだ。しかもくどいようだが、詞曲両方。これはすごいことだよ。

だったら是非編曲も……。と、唯一そこだけが、ちょいと心残りな『ラブ・ドラマティック』なのではありました。

近田 春夫/週刊文春 2019年3月21日号

Source: 文春砲

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