『暗号通貨の経済学 21世紀の貨幣論』(小島寛之 著) 銀(かね)さえあれば、何事もなる事ぞかし。(井原西鶴『日本永代蔵』) 生きている我々にとって命の次に大切なもの、お金。人の世にあって、お金はあらゆ…

暗号通貨を創り出す“技術”はいかがわしい? 「ブロックチェーン」の可能性とは?

3/13(水) 11:00配信

文春オンライン

 銀(かね)さえあれば、何事もなる事ぞかし。(井原西鶴『日本永代蔵』)

生きている我々にとって命の次に大切なもの、お金。人の世にあって、お金はあらゆる存在を相対化してしまう道具です。貨幣・通貨などと呼ばれることもありますが、その真の姿、「そもそもお金とは一体何なのか」を我々は深く考えることなく暮らしています。

二十一世紀の今、そんな我々の前に、そのお金が新たな衣をまとって現れて来ました。仮想通貨、暗号通貨、ビットコイン……などの言葉は目や耳にされたことがあるでしょう。コンピューター上でやり取りされるお金(?)のことです。

本書は気鋭の経済学者がその「新たな装いのお金」(以下、暗号通貨)について易しく解説しながら読者に「お金とは何か」を考えさせ、ひいては経済・文化・政治・社会を思索の射程に収める“導きの書”となっています。コンピューター上の記号に過ぎない存在がどうしてお金になり得るのか? その一点を問うことで様々な社会領域の未来が見えてくるのです。

評者は八〇年代から四半世紀に亘りファンドマネージャーとして金融市場で格闘をして来ました。その間、コンピューターが急速な発達を遂げ金融工学という道具が次々と市場に導入されました。デリバティブ(オプションや先物等)、ポートフォリオ・インシュアランスなどがそうです。それらはあくまで数学で“お金を動かす”ものです。暗号通貨もコンピューターによって生み出されたものですが金融工学とは全く違う画期的存在です。暗号通貨は「数学が“お金を生み出す”」もの。まさに錬金術! 事実、その出自と履歴は錬金術のようにいかがわしい。二〇〇八年にサトシ・ナカモトなる匿名の人物がウェブ上に公開した論文によって実用化が示唆された暗号通貨ですが、四百八十億円相当の暗号通貨が忽然と姿を消したマウントゴックス事件のせいもあり、詐欺まがいの似非(えせ)金融商品としか理解されてきませんでした。

しかし本書を読めば暗号通貨を創り出す“技術”がそんないかがわしさを吹き飛ばす途轍もない可能性を持つものだと分かります。『ブロックチェーン(分散型台帳技術)』がそれです。この技術によってコピーが当たり前とされるコンピューター上の情報が偽造不可能になり、情報の匿名性が確保出来るから情報に信頼や信用が担保される。本書ではその技術の理解に必要な『P2P』『PoW』『ハッシュ化』『アトミック・スワップ』などの重要用語が丁寧に解説されています。

『ブロックチェーン』は通貨だけに応用できるものではありません。ネット選挙の実現や公文書の偽造・改竄防止、登記の簡便化など我々の生活を一変させ得る可能性もあるのです。

お得感満載の来(きた)るべき未来への“啓蒙書”といって過言ではないでしょう。

こじまひろゆき/1958年、東京都生まれ。経済学者。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、帝京大学経済学部教授。著書に『ゼロからわかる 経済学の思考法』『文系のための数学教室』『世界は素数でできている』などがある。

はたのしょう/1959年、大阪府生まれ。一橋大卒業。投資ファンドのマネージャーを経て作家業に。著書に『銭の戦争』シリーズなど。

波多野 聖/週刊文春 2019年3月14日号

Source: 文春砲

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