この春もドラえもんはすごい。
長編劇場版シリーズの第39作目となる『映画ドラえもん のび太の月面探査記』が、公開わずか3日間で観客動員64万5000人、興行収入7億5700万円を記録。春休みが始まるとともに動員数はどんどん増えており、ドラえもん映画史上屈指のヒット作となっている。
今回の舞台は“月”だ。月にウサギがいると思いこんでいるのび太は、ドラえもんのひみつ道具「異説クラブメンバーズバッジ」を使って、月の裏側にウサギ王国を作り始める。そんなとき、学校に月野ルカという少年が転校してきた。のび太たちと一緒にウサギ王国へとおもむくルカ。そこに謎の宇宙船が現れ、ルカは捕らわれの身になってしまうのだが――。
脚本を担当するのは、直木賞作家、本屋大賞作家の辻村深月氏。ドラえもんフリークとして知られ、代表作の一つ『凍りのくじら』(2005年)では、各章のタイトルを「どこでもドア」や「もしもボックス」などお馴染みの「ひみつ道具」で揃えたほどだ。
その辻村氏に、“大人が見ても泣ける”ドラえもん映画を3作選んでもらった。生粋のドラマニアである彼女は、39作の中からはたしてどんな作品を選んだのか。
まずは、『映画ドラえもん のび太のパラレル西遊記』(1988年)。孫悟空や三蔵法師など西遊記の登場人物に扮したのび太たちが、牛魔王や金角・銀角ら妖怪に乗っ取られてしまった世界を救うために戦う物語だ。
「なんといっても主題歌が大好き。のび太たちに帰れるはずの日常がなくなってしまった状態で、旅に出ざるを得なくなる展開もスリリング。今も、この作品の主題歌『君がいるから』(歌:堀江美都子、こおろぎ’73)を聞くと、力が湧いてきます」
続いて、ドラえもんたち5人が地球を侵略しにやってきたメカトピア星のロボット兵団と戦う『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986年)。
「私が人生で初めて映画館で観た映画です。世界の危機をのび太たちが子どもたちだけで、文字通り水際で食い止めるところが子ども心にハラハラドキドキして、リルルとの別れに意味を完全にわかっていたとは思えないのに涙しました。5歳のあの日に観なければ今の自分はなかったかもしれない、と思うくらい、私にとっても特別な作品です」