『ホメチギリスト』(ジャニーズWEST)/『THROW YA FIST』(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)
◆
『ホメチギリスト』……。TVの画面に――番組の予告かなにかだったと思う――このカタカナ7文字を発見したときからずーっと、どんな楽曲、歌詞なのか興味津々の私であった。曲タイトルだけで「聴いてみよう!」なぞと思いたったのは、おそらくはつばきファクトリーの『低温火傷』(児玉雨子作詞)以来のことだ。
言語センス的には『がんばりましょう』の系譜に属するのだろうが、近頃では関ジャニ∞などのシングルにても散見される、ちょいとしたユーモアの片鱗などを感じさせる、どこか人を喰った味わいを持つというのか、トボケた風情のあるこうしたタイトル付けは、同種の人気者を抱えている他の事務所から出ているような楽曲には、そうざらにみられることではない。
それにしても、この題名を考えたとおぼしき岩崎貴文とはどんな人物なのか。検索をしていくと、元々はロックバンドのギタリストだったようだ。今は基本的には作詞より作曲/編曲を中心に活動しているようであるが、ジャニーズWESTの『ええじゃないか』(mildsaltとの歌詞共作)などでは、しっかりと“数え歌”それも語呂合わせといった約束事をちゃんと守った、かなり王道を行く、古風ともいえる仕事をものしていて、その詞作の技量はというとどうしてどうして、決して作曲家が片手間に書きました、といったレベルなんかではない。あたかも昭和の時代の職業作家が注文に応え書いたような、実に手堅い出来栄えなのだ。
資料によれば’76年生まれということなので、そのあたりはひょっとして共作者のお力添えの賜物なのかいなと。当初は疑ってもいた俺だったのだが、今回の作詞クレジットにあるのは本人の名のみである。そしてこの歌詞が、今述べたような意味でまた大変に専門職的な安定感と意外性を兼ね備え持つ着地をみせてくれているのを確認して、一瞬にせよ失礼なことを思ってしまったと、反省しきりだ。
なんといっても主人公の設定が決まっている。過去にもジャニーズではフォーリーブスの『踊り子』など、一人称が女性の作品はあったけれど、日々ルーティンワークに追われる男子女子それぞれへの具体的応援歌という作りは、これまでなかったのではないか。このコンセプトは、正直いってかなり想定外で、いい意味で期待を裏切られた格好であった。世相の反映といった視点からも、この歌詞はカジュアルかつリアルで、今風な景色をリアルに我々に提供してくれているだろう。
音の方も、無駄なくタイトにまとまった、いかにもこの事務所好みなメロディ/和声に、CHOKKAKUが更なるシェイプアップを施して、「シングルとはこういうものよね!」と。
まさにそんな声が聞こえてくるようなミックスであった。
THE RAMPAGE from EXILE TRIBE。
この、隙のない企画にあとひとつ欲しいのは“違和感”なのではと思ったのだが……。
今週の告知「2月18日に、この連載をジャニーズの楽曲しばりでまとめた本(『考えるヒット テーマはジャニーズ』スモール出版刊)がでるよ。初代担当氏が良い解説書いてくれているから、その部分だけでも読んでいただけたら!」と近田春夫氏。「それと15日には安齋さんとのトークイベントがあるから、興味ある人はネットでチェックしてね!」