記者会見やご著書などで、折に触れ“感銘を受けた本”について語ってきた美智子皇后。
昨年10月、皇后としては最後となったお誕生日会見でも、公務を離れたら「いつか読みたいと思って求めたまま、手つかずになっていた本を、これからは一冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています」とお答えになった。
とくに英国のユーモア小説「ジーヴズ・シリーズ」について「2、3冊待機しています」と明かされ、話題を呼んだ。ジーヴズとは英国の作家P・G・ウッドハウスが生んだスーパー執事の名で、エリザベス女王の母エリザベス皇太后やアガサ・クリスティー、吉田茂も愛読していたことで知られる。美智子さまのこの会見を機に、出版界ではにわかにジーヴズ・ブームも起きた。
幼少期から「『クマのプーさん』に母親の訳で親しむ」など、文学の世界に魅了されてきた美智子さま。その豊かな読書遍歴について、画家の安野光雅さん、ドイツ文学者の池内紀さん、女優の檀ふみさんが語りあった。
美智子さまの「愛読書リスト」を手にした池内さんは、
「一目見ただけで、この方は相当な本好きだとわかりました。皇后さんのような女子学生がクラスにいたら、教師は実力が見透かされて大変だろう」
と苦笑気味。さらにこの「読書リスト」には、3種類の本が満遍なく入っていると池内さんは指摘する。
1つ目は、「教養書」。皇后さまの世代で読んでおくべきとされた、ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』や、トルストイ『人は何によって生きるか』だ。
2つ目はW・H・ハドソンの『はるかな国とほい昔』、サン=テグジュペリの『星の王子さま』のような「愛読書」。
そして、もっとも美智子さまの人となりを表す3つ目が、世間ではあまり知られていない比較的マイナーな作品群だ。池内さんは、「自分で見つけて、自分の読み方をする。それこそが本好きの条件です」と語る。
また、カルル・ブッセや、フランシス・ジャム、タゴールなど、つねに詩を読んでこられたことも、本物の読書家の証拠と分析する。「散文から詩に行く人は、本当に本好き、活字好きで読みの深い人です」(池内さん)。