かつて女性は、“子供”からある日いきなり“大人”になった。結婚し、子育てをして……。 それが明治時代、女学校ができたことから…
かつて女性は、“子供”からある日いきなり“大人”になった。結婚し、子育てをして……。
それが明治時代、女学校ができたことから、子供と大人の間にいるモラトリアムな存在“少女”が生まれた、と言われている。
この説に、わたしも長らく納得してきた。でもさいきん、“少女”と“大人”の間に、さらに新しい生き物がいるような気がし始めた。その気配を探して、街で若い女の人の姿を目で追ってしまうこともあるのだ。
さて、この映画は、一九八〇年代後半から一九九〇年代生まれの女性監督十五人による、短編オムニバスだ。
初めての恋人と穏便に別れたくて、薬局で謎の薬コイサメル(恋冷める)を買い求めるヒロインを描く「恋愛乾燥剤」(枝優花監督)。デザイナーを目指す読者モデルの専門学校生が、一足先に社会人になった先輩の暴言を受けて、(言葉は大事にしたい。あなたの一言で私は人生を棒に振ることができる)と静かに独白する「out of fashion」(東佳苗監督)など。
どの作品も、少女より大人だが、まだ女としてこの世に定着しきらない季節をさまよう若い魂の在りようを、ひどく生々しく切り取っている。はっきりしたラスト、オチがないのは、この映画が、いままさにその時を生きている人の声であり、まだ青春の結論なんて出ていないからだろう。そのことにも心を揺さぶられた。
他、山戸結希、井樫彩、加藤綾佳、坂本ユカリ、首藤凜、竹内里紗、夏都愛未、ふくだももこ、松本花奈、安川有果、山中瑶子、金子由里奈、玉川桜監督が参加。
観終わって、あぁ、今作を企画した山戸監督は、きっと、わたしが探していた“少女”と“大人”の間の生き物に、“21世紀の女の子”という名前を付けたのだなと思いました。
女性はもちろん、男性にも、観て、まっすぐに体験してほしい一本です。
INFORMATION
『21世紀の女の子』
2月8日よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー
http://21st-century-girl.com/
桜庭 一樹/週刊文春 2019年2月14日号
Source: 文春砲