2019年の元旦、そごう・西武の広告「わたしは、私。」に対して批判が集まりました。女性に寄り添ったつもりの広告が、なぜかピントがずれた内容になってしまったり、共感を得られず不評を買ってしまう&hell…

女性コピーライターの草分け的存在が感じた「女の時代、なんていらない?」への困惑

かつての西武の広告は最先端だった

 2019年の元旦、そごう・西武の広告「わたしは、私。」に対して批判が集まりました。女性に寄り添ったつもりの広告が、なぜかピントがずれた内容になってしまったり、共感を得られず不評を買ってしまう……。今となってはおなじみの光景です。

株式会社電通EYE元社長で、国鉄、サントリー、松下電器など数多くの企業の広告を手がけてきた女性コピーライターの草分け的存在、脇田直枝さんに女性向け広告のあり方について思うところを書いてもらいました。

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早くから女性への応援メッセージを送っていた西武

©Getty Images

1979年に西武百貨店が打ち出したキャッチフレーズが「女の時代」。当時は男尊女卑の時代でした。女性の大学進学率が上昇してきたのに大卒女子に就職の門戸は閉ざされていた、働く場がなかった。コピーライターだった私は「どうせ女をおだてて買わせようという魂胆だ」と、女性の実態とかけ離れたこのフレーズに反感を持ちました。

しかし、実は西武はその前年から「飛びたい人の西武」をスローガンにして女性が心に羽をはやすよう、応援メッセージを送っていました。米国でウーマンリブが盛んになり、その波が日本にも伝播してくることを何社かの先進的な企業は察知していて、西武はそのうちの一社でした。

角川文庫は「女性よ、テレビを消しなさい」(1975年)、伊勢丹は「なぜ年齢を聞くの」(1977年)といった女性の自立を促すメッセージで社会を刺激していました。こうした背景があって西武は「女の時代」がこれから来ると踏みこんだのです。

名コピー「いま、どのくらい『女の時代』なのかな。」の裏側

広告は、社会を揺さぶった ボーヴォワールの娘たち』(宣伝会議)

広告は、社会を揺さぶった ボーヴォワールの娘たち』を出版するにあたり、糸井重里さんに西武流通グループの広告を手がけた際のことについて原稿を依頼した折に、西武の経営のトップでいらっしゃった堤清二さんが将来のことを洞察して「女の時代」というフレーズを採用していたことを知りました。今でいうところの女性活用制度を発想していらしたのです。

「女の時代」宣言から1年後、西武流通グループは「ライセンス制度」を発表しています。デパートは女性店員で成り立っていますから雇用確保のためでしょう、結婚・退職、子育て後も復帰できる制度。前述の、糸井さんが手がけた「いま、どのくらい『女の時代』なのかな。」という西武流通グループの広告がその告知でした。社会進出を具体的に後押しする手段の提案です。同時に女性の人材派遣会社も設立していました。

結婚退職が当たり前とされていた時代です。世間は、ライセンス制度なんて利用者はいないよ、と冷めた反応でした。しかし、徐々に妻が外で働くことを世間が認める風潮となり、働くミセスが1人2人と増えていきました。

再雇用制度が一般的に整いだしたのはごく最近のことですからその先見性には改めて驚きます。

Source: 文春砲

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