カルロス・ゴーン氏の逮捕に端を発する「日産・ルノー」問題の第2幕が切って落とされた。
ルノーの筆頭株主であるフランス政府出身で、現ルノー取締役であるマルタン・ビアル氏らが1月20日までに来日して日本政府側に、両社の経営統合計画を伝えた模様だ。
このフランス側が取った行動の意味は大きく2つある。
日産はフランス政府側に「不正内容」を伝えた
まずは問題のステージが変わったことを示しているのだ。
日産はフランス側にもゴーン氏のCEO解任を求めていたが、推定無罪の原則や日産の社内調査が明らかになっていないことを盾に、フランス側はゴーン氏の処遇を保留していた。日産は、ゴーン氏がルノーのCEOにとどまったままでは、両社のアライアンス(同盟)関係の今後については話し合いの席につけないとの考えだった。
このままでは時間だけがずるずると過ぎて、両社の本業への影響が出る可能性が高まったため、日産は「ロビー活動を通じて非公式にフランス政府側に対し、社内調査によるゴーン氏の私的流用などの不正内容を知らせた」(日産関係筋)ことで、フランス政府がゴーン氏のルノーCEO職を解任せざるを得ないと判断する方向に持ち込み、次のステージに移った。
フランス側は提携解消だけは認められない
フランス政府側にとってはデモンストレーションの意味もある。たとえゴーン氏がルノーCEOを外れても、当初の目論み通りルノーと日産の経営統合は進めるということを日本政府に宣言し、それをメディアが伝えることを狙っている。現にビアル氏は来日しながら、1月20日までの時点で日産の西川廣人社長に会った節がない。
もし、日産側とアライアンスについて話し合うのであれば、極秘に来日して、人目のつかないところで、西川氏とは交渉するはずだ。筆者は自動車産業を20年以上取材してきたが、ナーバスな交渉はメディアを煙に巻きながら行うものだ。
デモンストレーションをしたのには、日産が嫌がる経営統合をちらつかせ、日産や日本政府がどのような反応を取るかを見る狙いがある。ルノーの純利益の半分以上は日産からの配当で成り立ち、自動運転などの先進技術も日産に頼り切りで、ルノーの方が日産を手放したくないとの思いが強い。フランス側にとっては提携解消だけは絶対に認められない線だろう。
これに対して、日産は経営の独自性が維持できなければ「離婚」も辞さないだろう。フランス側としては高い要求を投げて、状況に応じては譲歩していくという戦略ではないか。最初から低い要求だと、譲歩する「糊代」が小さくなり、交渉に余裕がなくなるからだ。
今後、両社の交渉は予断を許さない状況で展開していくだろう。日産・ルノーの交渉という点では第二幕に突入したが、筆者は「ゴーン氏の不正」という点についてはまだけりがついたとは思っていない。これが本稿のメインテーマである。