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文春:内田春菊「人工肛門(ストーマ)をつけた私と普通の生活」

大腸がんと診断され、人工肛門(ストーマ)を造設した内田春菊さん。

がん治療の実情や、ストーマライフにどう向き合ってきたのか、

内田さんのリアルな体験談をお聞きしました。

内田春菊さん◆ ◆ ◆ストーマをつけた…

 

内田春菊「人工肛門(ストーマ)をつけた私と普通の生活」

内田春菊「人工肛門(ストーマ)をつけた私と普通の生活」

内田春菊さん

大腸がんと診断され、人工肛門(ストーマ)を造設した内田春菊さん。がん治療の実情や、ストーマライフにどう向き合ってきたのか、内田さんのリアルな体験談をお聞きしました。

◆ ◆ ◆

■ストーマをつけた自分やその後の生活が想像できなかった

──内田さんは、大腸がんと人工肛門(ストーマ)の造設について、いろいろなところで体験を発表されていますね。

内田 自分ががんになってみたら「実は私も」という人が意外に多くて、みんな黙って治療していたんだなあと思ったんです。私は情報がほしくていろいろな人に話を聞いたり、本を読んだりして調べたんですけど、がんってものすごく個人差があって、その人によってみんな違うんですよね。だから、私の体験も情報のひとつとして誰かの参考になればいいかなと。

──がんが見つかった時、どんなお気持ちでしたか。

内田 私の周りの大腸がん経験者は、治療がうまくいっていた方が多かったので、私も「大腸だからダイチョウブ! 死ぬようながんじゃないと思う」とずいぶん簡単に言っていました。でも、私の好きだった女優の坂口良子さんも大腸がんで亡くなられていますし、女性のがん部位別では大腸がんが死因の1位だと後から聞き、私は本当に運がよかったんだ、と思いました。

──がんと診断された時よりも、人工肛門(ストーマ)をつけると言われた時の方がショックだったとお聞きしました。

内田 そこは考えていなかったので、ビックリしました。ストーマについての知識ももちろんなくて、部分サイボーグみたいなイメージを持っていたんです。お腹につけるというのも知らなかったので、「硬いものを部分的にお尻につけるのかな」なんて思っていて、ストーマをつけた自分やその後の生活が想像できず、だいぶ悩みました。

■長女からの「かあちゃんが変わるわけじゃないから」

──手術の前に抗がん剤治療をされたそうですね。

内田 肛門から2センチのところに腫瘍ができていて、「すぐに手術をすると人工肛門は免れない。手術前に抗がん剤治療をしてがんを小さくし、肛門からの距離が広がれば、人工肛門にしなくてすむかもしれない」と主治医から説明を受けたんです。だから、「人工肛門を回避できる可能性が大きくなるなら」と、抗がん剤治療からスタートしました。でも、抗がん剤には「髪が抜ける」「吐き気がある」など、副作用のイメージがあって不安には思いました。

──仕事と家事と治療と、バランスを取るのも大変でしたよね。

内田 子どもたちは料理が好きで、自分で食事も作れるので、家の事はそれほど心配しなくて大丈夫でした。仕事もその時はそんなに多くなかったので、まとめて早めに描いてしまえば、休むほどではなかったんですよね。でも、時々家でぐったりしたり、ゴロゴロしたりはしていました。あとこれは今もそうですが、悪い方に考え出したなという時は、とにかく寝るようにしていました。

──抗がん剤の治療中、日常生活で困ったことや不自由はありませんでしたか?

内田 主治医に「大腸の抗がん剤は、つわりより軽いと思う」と言われた通り、副作用はそんなに大変ではなかったんです。髪の毛が抜けることもなかったんですけど、指先がビリビリしたのは困りました。手袋をしても指の先に氷が入っている感じで、冷凍品だけでなく、冷蔵庫の中のものもビリビリして触れないんです。サラダはカット野菜を買ってきて、りんごは自動皮むき器とカッターを使うなど、便利なものを活用していました。

──人工肛門は避けられないと言われた時、ご自身の気持ちをどう整理されましたか。

内田 抗がん剤治療中はずっと「ストーマにならなきゃいいな」と思っていたので、入院当日に人工肛門造設の説明を聞いている時も「ならないかもしれないから」と思っていたんです。でも、付き添ってくれた長女が「(人工肛門になっても)かあちゃんが変わるわけじゃないから」と言ってくれて、励みになりました。

──優しい娘さんですね。

内田 今も外出中には万一に備えて、替えのパウチや面板(プレート)、ポリ袋、はがし剤などを持ち歩いているのですが、長女が「生理の時に生理用品持って歩くのと同じ」と言ってくれて、確かにそうだなと納得できました。今は慣れたのでトラブルはほとんどありませんが、最初は大変でした。

■お酒を飲まなくても十分楽しい

──どんなことが大変でしたか?

内田 気分が落ち込んだ時もそうですが、お酒を飲みすぎた後は特に、お腹を壊したりその後便秘が続いたりしてプレートがはがれてしまうことが多くて。家だといいんですが、外出先でパウチの中身を捨てたり交換したりする回数が増えると大変なんですよ。スコッチケーキを食べて顔が真っ赤になる母親の遺伝子を受け継いだのか、もともとそんなにアルコールに強いわけではなかったので、お酒はやめようと一切飲まなくなりました。

──禁酒は医師からもすすめられたのですか?

内田 主治医の山田先生もお酒好きなので、それはひと言もおっしゃらなかったですね。「がんと言われただけでへこむのに、このうえさらに禁酒しろなんて言えない」と。でもね、不思議なものでお酒をやめてもうすぐ2年になりますけど、今ではもう、お酒を飲んでいる自分を想像するだけで、なんかだるくなるんですよ。お酒を飲まなくても十分楽しいですしね。

──まだ検査などは定期的に通われていますか?

内田 今年の夏、お尻の傷の内側にCTでは何だかわからない影があると言われて、MRIだと3カ月待ちになってしまうため、PET検査を受けてくださいと言われました。山田先生に「それ、すごい高いやつですよね」って聞いたら、「3万円くらいだけど、印税入ったんですよね」と言われて「はい」と……(笑)。医師の診断で行ったので2万8千円でしたが、自分で「どこか悪いところがあるか調べたい」と行くと13万円かかると聞きました。

──13万円! そんなに……。

内田 それでも安くて、有名な病院だと20万円くらいするところもあると言われました。「PET検査が高い」というのは、おそらくそういうところから来ているのではないかと思います。次は12月に血液検査の予定ですが、PET検査のおかげでがん細胞がどこにもないことが分かったので、しばらくは安心して過ごせます。

うちだ・しゅんぎく/1959年長崎県生まれ。84年4コマ漫画でデビュー。93年発表の小説『ファザーファッカー』と94年刊の漫画『私たちは繁殖している』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『南くんの恋人』『お前の母ちゃんBitch!』『おやこレシピ』など作品多数。『がんまんが』と続編の『すとまんが』で自身のがんやストーマ体験の経緯を描いている。最新刊は『ダンシング・マザー』。

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(相澤 洋美)

Source: 文春砲

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