良質な睡眠が、がんの発生を予防する。では、その良質の睡眠をどのように日常生活に取り入れていけばいいのか。眠りながらでもできるがん予防のテクニックを、医師の南雲吉則氏が伝授する。
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良質な睡眠を取るための、日常生活で取り入れたいテクニックについて述べたいと思います。
ナポレオンは3時間しか眠らなかったと言われます。本当にそんなことが可能なのでしょうか――。
実は、医学的には可能なのです。
脳が最低限必要とする睡眠時間は3時間。ただし、いつでも3時間寝ればいいというものではなく、「ある時刻」にその3時間が重なるように睡眠時間を調整する必要があるのです。
この「ある時刻」とは、午後10時から午前2時までの間。これを「睡眠のゴールデンタイム」といいます。つまり、この4時間のゴールデンタイムに睡眠時間が重なるようにすれば、最低3時間の睡眠でも、人は熟睡し、良質な睡眠を得ることができるのです。
朝は空腹で働く時間
なぜそんなことが言えるのかというと、人間の体には体内時計があり、一定のリズムに合わせた生活を送っています。
睡眠の周期は「ウルトラディアンリズム」という一時間半ごとの周期で、この一時間半の間に「ノンレム睡眠」という深い眠りと「レム睡眠」という浅い眠りが起こります。
ゴールデンタイムの間は主に深い眠りで、脳は完全休息します。また脳からは若返りホルモンとも呼ばれる「成長ホルモン」がだくだくと出て、体中の傷ついた箇所を修復してくれます。ウルトラディアンリズム2周期分眠れば3時間で、脳も体も十分に休むことができるのです。
しかし明け方になると浅いレム睡眠になるので、いくら寝ても夢ばかり見て脳は休めませんし、体もだるくなるのです。
夜更かししてから寝ると良い睡眠をとれない理由は他にもあります。
人間の体には、もう一つ「サーカディアンリズム」という体内時計もあり、一日よりも若干長い25時間ごとの日周リズムを作っています。
この日周リズムによって日中は交感神経が優位になって「お仕事モード」になり、夜間は反対に副交感神経が優位になって「お休みモード」になるようにできているのです。
脳からは、日中、幸せホルモンである「セロトニン」が出て、やる気満々になります。セロトニンは14時間後の夜間になると睡眠ホルモンである「メラトニン」に変わりぐっすり眠れます。