英国のメイ首相は、EUと合意に達した585頁に及ぶ離脱協定案について、11月14日に開いた緊急閣議で承認を得た。だが、翌15日、メイ首相の“ソフト・ブレグジット路線”に反発した交渉責任者のラーブ離脱担当相ら閣僚を含む7人が要職を辞任。熱烈なクリケット・ファンで知られるメイ首相はこの日の会見で「政権崩壊まであと幾つウィケット(打者の後方に置かれる3つの柱)を倒せばいいのか」と質問され、「最後の最後に得点してみせる」と強がってみせたが、混乱が収まる気配はない。

最大の問題は、模範的な優等生にありがちなメイ首相のリーダーシップだ。

メイ首相の内相時代に仕えた官僚は筆者に「メイはリスクを取るのを避け、批判を嫌い、内輪以外の人を信頼しない。このため決断を避けるか、決断しても極めてマズイものになってしまう」と語る。今回も当初は「悪い合意ならしない方がマシ」と啖呵を切ったが、ハード(強硬離脱)からソフトに舵を切り、中途半端な印象を与えた。世論調査でも、離脱交渉の不支持率は73%に達している。

国外にも、メイ首相の味方は少ない。