NHK杯が終了し、フィギュアスケートのグランプリシリーズも半ば以上が過ぎた。今シーズンはルールが大きく変わり、新たにどのような地図が描かれるのか注目されたが、ここまでの大会で圧倒的な輝きを見せたのは、やはり、羽生結弦だった。
第3戦のフィンランド大会に出場した羽生は、297・12点で優勝した。2位に40点弱の大差をつけたこの得点は、今季世界最高得点でもあった。
数字ばかりがすごかったのではない。フリーでは国際スケート連盟公認大会で史上初となる4回転トウループ―トリプルアクセルという高い難度のジャンプを着氷させたのである。
他の追随を許さない演技にもかかわらず、羽生は言った。
「まだまだ練習していかないといけないと思います」
その言葉にあったのは、圧倒的な向上心だった。
大会には日本から数多くのファンがつめかけたほか、(他の大会でもそうだが)羽生の写真を撮ろうとする現地スタッフの姿も多数、見られた。
リンクの外でも存在感を示した羽生には、この大会で、いくつも印象的なエピソードがあった。
この大会に出場した白岩優奈という女子の選手がいる。
「集中の仕方とか、学ぶことが多かったです」
羽生とともに出た大会を振り返る白岩は、羽生から「次に会うときまで、頑張ろうね」と言葉をかけてもらったと明かすと、こう語った。
「200点台を目指したいです」
刺激を受け、学び、エールをもらったことで、意欲を増したようだった。
あるいは男子で表彰台に上がった選手たちによる記者会見での光景も記憶に残る。
羽生は堂々、英語で海外の記者の質問に対応し、現地のスタッフらともスムースにやりとりし、海外のフォトグラファーのリクエストにも疲れの色を見せず対応する。
その姿は、1位という成績以上に、羽生がフィギュアスケート界の中心にいること、そしてそのことを本人が自覚していることを感じさせた。白岩のエピソードも合わせ、そこに浮かび上がってくるのは、「リーダーシップ」という言葉だった。
フィンランドでの羽生は、これまで取材した他競技の選手、特に同世代のトップアスリートたちが羽生について触れた言葉も思い起こさせた。羽生と同い年の大谷翔平はこう言ったことがある。「僕は『羽生世代』
だと思っています」。 思えば、羽生と同学年には、大谷以外にも輝かしい実績を残した選手が数多くいる。野球の鈴木誠也、スピードスケートの高木美帆、サッカーの中島翔哉、南野拓実、競泳の萩野公介、瀬戸大也……。他の世代と比べ、突出している。
なぜそのような現象が起きたのか。「文藝春秋」12月号に「『羽生結弦世代』最強伝説」という記事を書いた。羽生がフィギュアスケート界を超えた影響力を持つ理由について考察している。ご一読いただきたい。
Source: 文春砲