ロシアで〝悲惨な戦勝記念日〟各地でパレード中止、プーチン氏自身に逮捕状 かえって「国内外での求心力低下を象徴する日に」中村逸郎氏
ウクライナ侵略を続けるロシアは9日、第二次世界大戦時のナチス・ドイツへの勝利を祝う「戦勝記念日」を迎えた。恒例の軍事パレードは各地で中止され、兵器の損耗が深刻との見方も浮上する。プーチン大統領は首都モスクワで行われる式典で演説する予定だが、ウクライナでの戦争犯罪の容疑者として国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されるなど、国際社会でも孤立感が深まっている。
◇
軍事パレードはモスクワ中心部の「赤の広場」などで行われる予定だが、露独立系メディア「ビョルストカ」は、4月下旬~5月上旬に少なくとも21都市でパレードの中止が決定されたと伝えた。
米シンクタンクの戦争研究所は「戦力の消耗を覆い隠そうとしている可能性が高い」とし、3日のクレムリン(大統領府)への無人機攻撃も、パレード中止を正当化する口実だと分析する。また、パレードがウクライナ侵略への抗議の場になることをロシア側が恐れたとの見方もある。
筑波大の中村逸郎名誉教授は「ロシアの愛国心と一体感をはぐくむためには、地方でのパレードの開催は重要だった。プーチン氏肝いりの行事であるだけに、政権にとって大きな痛手になる」とみる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ナチス・ドイツが降伏した5月8日を「戦勝記念日」とすると述べ、9日を記念日とするロシアと一線を画した。ゼレンスキー氏は4日にはオランダ・ハーグのICCを電撃訪問し、「ロシアの侵略犯罪は法廷によって裁かれるべきだ」と演説、特別法廷の設置やプーチン氏の処罰を訴えた。
ICCをめぐっては、8月に新興5カ国(BRICS)首脳会議を議長国として開く南アフリカのラマポーザ大統領が先月、離脱に言及した。プーチン氏を会議に招くと身柄拘束義務が発生するための配慮とみられるが、その後「言い間違えだった」と残留の意向を示すなど混乱を招いた。
親ロシアの国にとってもプーチン氏は〝腫れ物〟のような存在となっている。
ウクライナ戦線では、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は7日、「さらなる作戦継続に必要な弾薬と武器(の提供)が約束された」と通信アプリに投稿した。十分な弾薬供給を受けられないと批判し、ウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトからの撤退方針を示していたが、一転して戦闘継続を示唆した。
だが、ウクライナの本格反攻も近いとみられ、プーチン氏は自身が旗を振った「特別軍事作戦」の戦果を強調しづらい状況だ。
中村氏は「プーチン氏の国内外での求心力低下を象徴する日となるのではないか。国際的な孤立も深まり、サミットを控える西側諸国との対立はより鮮明になるかもしれない。これを境に、窮地に立たされたプーチン氏が戦術核の使用に踏み切る恐れもある」と懸念を示した。
この記事が気に入ったらフォローしよう
最新情報をお届けします
Twitterでフォローしよう
Follow @8YLzvPabWmL9FhM