「“本流”はYouTubeなんてノーマークだった」
日経新聞社の“本流”とされるのは1500人の記者を抱える編集局だが、同チャンネルは「日経電子版」などデジタルコンテンツの“出し先”を担っているデジタル事業(現・サブスクリプション事業部門)内の企画として立ち上がった。
「編集局に近い報道班ではなく、あえてバラエティ班と組むことにしました。テレ東のバラエティ班は、『ゴッドタン』の佐久間宣行さん、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の上出遼平さんなど尖った番組を作れる人材を多数輩出しています。面白いYouTubeチャンネルを作ろう、ということでアサインされたのが、政治経済ネタにも強い高橋さんだったのです」(同前)
高橋弘樹氏(テレ東プラスより)
こうして2021年4月に「日経テレ東大学」はスタート。着実に視聴者を獲得していった。
「当初、日経の“本流”はテレ東のバラエティ班と組んだYouTubeなんてノーマーク。誰も関心を寄せていなかった」(同前)
多様なゲストとの議論が人気を呼んだ(日経テレ東大学YouTubeより)
そんな中の2022年3月、日経の組織改編と人事異動が行われた。「デジタル事業」は無くなり、紙の定期購読も含めた「サブスクリプション事業部門」という部署に改編。「日経テレ東大学」のチームもその部署に組み込まれることになった。別の日経関係者が語る。
「担当役員も替わった。日経BP出身の専務から、日経本体出身でグローバル事業畑が長い常務がトップになったのです。この人事によって、以前よりも編集局の意向が反映されやすい環境になりました」
「日経テレ東大学」の内容について、日経の“本流”から問題視する声が相次ぐようになったのは、その数カ月後のことだった。
「『訴訟を複数抱え、SNSでもたびたび炎上するひろゆきが出演しているのはいかがなものか』『日経ブランドを毀損している』などの指摘が出ました。それ以外にも、『投資するとめちゃくちゃ儲かる』などという出演者の発言について、『日経の看板で投資誘導をするのは問題ではないか』というコンプライアンス上の問題を指摘する意見も出ていました」(同前)
ひろゆき氏は小誌の取材に…
そして、「止めるべきだ」という圧力は強まっていき、昨年12月、サブスクリプション事業部門は正式に制作スタッフに終了を通告した。テレ東関係者が明かす。
「問題動画だけを消すのか、チャンネル自体を終了させるのかの議論もありましたが、結局、『終了』ということになりました。決定が伝えられた日、高橋さんは涙を流して悔しがっていました」
出演者だったひろゆき氏に取材を申し込んだところ、メールで応じた。
ひろゆき氏(本人のYouTubeより)
――日経テレ東大学が終わることを、いつ、どのように知らされたか。
「去年の冬ぐらいから終わらされそうだけど、出来るだけ続けられるようにしたいと聞いてました」
一方、日経新聞社に終了の理由などについて質問状を送ったところ、こう回答した。
「日経テレ東大学に関するご質問について、現在お答えできることはありません」
日経新聞本社 ©時事通信
2月15日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」では、日経社内から問題視する声があがるきっかけの一つとなった元日経記者・後藤達也氏の出演など「日経テレ東大学」が終了に至った詳しい経緯、ひろゆき氏が小誌の取材に明かした「終了の理由」と「高橋Pから言われたこと」、テレ東退社後の高橋氏の計画、今回の騒動が招く日経の“あるリスク”などを詳しく報じている。