日米両政府が有事の際の連携手順を定める「日米共同対処計画」を改定する方向で検討に入ったことが17日、分かった。政府が16日に閣議決定した「安保3文書」で、敵の領域内の軍事目標を攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を盛り込んだことを受け、日米間の調整が必要と判断した。複数の政府関係者が明らかにした。
共同対処計画は、自衛隊と米軍の基本的な役割分担を定める「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を踏まえて策定されている。内容は非公表で、南西諸島有事や朝鮮半島有事などを想定し、軍事作戦を行う際の戦闘や後方支援などに関する連携の手順を盛り込む。反撃能力に限定した新たな計画を作成するのではなく、全体の共同対処計画の中で反撃能力を位置づける。
共同対処計画の改定が必要と判断したのは、反撃能力の運用が日米共同作戦を前提としているからだ。標的の探知・追尾、攻撃効果の判定などは自衛隊単独では難しく、偵察衛星や無人機などを運用する米軍の協力が不可欠となる。
日米双方が打撃力を行使する際、友軍の誤爆や攻撃目標の重複を回避するため日米間の連携がより重要となる。自衛隊と米軍が活動する空海域の調整も課題だ。米側からは北大西洋条約機構(NATO)や米韓同盟と同様に、連合司令部の創設や指揮統制システムの統合を求める声もある。
だが、常設の連合司令部を設置すれば、日本側が武力行使の条件となる「存立危機事態」などを認定していない段階で米軍の攻撃と一体化する恐れもある。平時の「他国の武力行使との一体化」は現行憲法解釈では認められておらず、3文書では同盟調整メカニズム(ACM)を強化する方針を盛り込んだ。
こうした方針は、日米両政府が来年1月に開催する方向で調整している外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で確認する見通し。政府内にはガイドライン見直しを求める声もあるが、「基本的な日米の役割分担は変わらない」として否定的な意見もある。