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クアッド、地域の発展推進…インド・モディ首相寄稿:読売新聞

24日に開かれる日米とオーストラリア、インドの枠組み「クアッド」の首脳会談に出席するため来日するインドのナレンドラ・モディ首相が本紙に寄稿した。全文は次の通り。

ナレンドラ・モディ首相(在日インド大使館提供)
ナレンドラ・モディ首相(在日インド大使館提供)

 特別・戦略的・グローバル。日本とインドとの関係を示すこの三つの言葉は一語一語に比類なき重要性を持つが、両国の絆が秘める可能性には遠く及ばない。

 文化的なつながりは数世紀にも遡る。地域的、世界的な展望の合致だけでなく、民主主義、自由、ルールに基づく国際秩序の価値を共有する強い信念は、信頼と本物のパートナーとしてのインドと日本の関係の根幹をなすものだ。

 (奈良時代に日本で仏教を広めたインド僧)菩提僊那(ぼだいせんな)から(インドの偉大な宗教指導者)スワミ・ヴィヴェーカーナンダまで、両国の文化的な絆には互いの敬意と学び合いからなる長く豊かな歴史がある。マハトマ・ガンジーが大切にしていた所蔵品の中には、「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿の小さな彫像がある。また、(日本の戦争責任が問われた東京裁判で唯一、被告全員の無罪を主張したインドの)ラダビノード・パル判事は、日本でもよく知られているし、(アジア初のノーベル文学賞受賞者のインドの)詩聖タゴールの日本に対する称賛と岡倉天心との交流は、両国の芸術家や知識人同士の初期における人脈構築の原動力となった。

 両国が国交樹立70周年を迎えるにあたり、こうした深い関係は、近代におけるインドと日本の成熟し続けるパートナーシップの強固な基礎を築いている。

 このパートナーシップへの私自身の確信は、グジャラート州首相時代に始まる。日本の技術と技能の精巧さだけでなく、日本のリーダーシップとビジネスの真摯で長期的に関わりを持とうとする姿勢からだった。それによって、日本は、グジャラート(州)における工業分野の優先的パートナーとなった。また、投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート・サミット」の開始以来、最も傑出した存在感を示してきた。

 

日本はまた、インドが開発と近代化を推進する過程で、かけがえのない協力者であることも証明した。自動車産業から産業回廊に至るまで、日本の投資と開発支援の足跡はインド国内全域に及ぶ。ムンバイとアーメダバードを結ぶ高速鉄道事業は、「新たなインド」に向けた最も重要な取り組みにおける日本の幅広い協力を象徴するものだ。

 両国は、1952年の外交関係樹立以来、長期にわたって往来があった。とはいえ、私の考えでは最良の時期はこれからであるはずだ。インドと日本には今、ポスト新型コロナウイルス期の経済の再活性化と立て直しを見据えるにあたり、貿易から投資、さらには防衛と安全保障に至るまで、全ての領域にわたって我々の関与をさらに深化させる計り知れない余地がある。

 この数年間、インドは製造業やサービス、農業、デジタル技術インフラの基盤強化に乗り出している。日本は、インドの持続的な変革に欠かせないパートナーだ。日本にとっては、インドのスピード感や規模は、商慣行の簡素化や優遇措置、大胆な改革と野心的な計画と合わせ、またとない好機になるだろう。インドはまた、100以上のユニコーン(企業価値が10億ドル以上)の未上場新興企業があり、活力ある起業環境を整えている。日本資本は既に重要な役割を果たしており、さらにはるかに大きな可能性がある。

 両国の国民同士のつながりは相互理解の深化に欠かせない役割を果たしてきた。多くのインド国民が現在、日本で働き、日本経済と社会に貢献している。日本の企業幹部らがインドの経済成長に貢献しているのと同様だ。この相互補完的な関係はさらに多岐にわたって拡大しうる。

 しかし、我々の関係にはさらに重大な責務と大きな目的がある。新型コロナウイルス感染拡大、世界規模の緊張、インド太平洋の安定と安全を脅かしかねない破壊的な行動は、強制や搾取に支配されないような、強靱なサプライチェーンの構築、人間主体の開発モデルや強力で安定した国際経済関係の必要性を改めて示した。両国のパートナーシップはこうした目的の推進に役立つだろう。

そのためには、我々は開放的で自由かつ包摂的なインド太平洋の構築に貢献する。これは、安全な海洋でつながり、貿易と投資によって統合され、国際法に明文化された主権と領土の一体性への尊重によって特徴付けられるものである。

 戦略的に重要なインド太平洋に位置する2つの民主主義国として、両国は地域における安定と安全の重要な要となり得る。だからこそ、両国の協力関係は幅広い分野に拡大しており、両国の防衛協力は、合同演習から情報交換、防衛産業まで急速に緊密化している。両国はサイバー、宇宙、海中の各領域でさらに協力を進める。

 安全保障の他にも、地域内外の価値観を共有する国々、日米豪印の「Quad(クアッド)」などの枠組みと共に、我々は開発、インフラ、連結性、持続可能性、健康、ワクチン、能力構築や災害時の人道対応など、この地域での取り組みを推進する。平和で豊かなインド太平洋地域は、世界全体のより良い未来のためにも非常に重要だ。

 危機は時に、より大きな試練となり、変革を加速させる。だからこそ、世界にとって転機を迎えている今、両国の協力関係はより重い責任と緊急性を要している。両国が共有する、この数十年間にかけて構築してきたもの全てを持ってすれば、インドと日本はこうした要求に応えることができる。

 今年3月、ニューデリーで、岸田首相と私は、平和で安定し、繁栄した新型コロナ後の世界に向け、「印日特別戦略的グローバル・パートナーシップ」を深化させるためのロードマップを示した。国交樹立70年を迎えるにあたり、この地域における決定的な協力関係を構築している。私は岸田首相との会談で、この野心的な議題の実現への確実な進展が得られると確信している。

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