わずか24時間動かないだけで、骨格筋に脂肪がたまり、血糖値をコントロールするインスリンの効きが悪くなることを前回紹介した。この研究では、そのメカニズムも解明されている。
「動かない状態が続くと、脂質を作り出す酵素『LPIN1』が活性化し、骨格筋の脂肪の蓄積と連動していました。マウスの研究のみならず、ヒトにおいても、同様の結果が得られました」
こう話すのは、研究メンバーの順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学/スポーツ医学・スポートロジー先任准教授の田村好史医師。太っていなくも糖尿病になるメカニズムなど、さまざまな研究成果を挙げている。
「体重の増減とは異なる仕組みとして、不活動は代謝面でも、筋肉量を維持する面でも、大きなファクターとなります。太っていないから安心ではなく、動かないことがよくないのです」
長らく続いたコロナ自粛では、テレワークの推進で通勤が減ったこともあり、運動不足に拍車がかかった人もいるだろう。家でジッとしているだけでも、脂質を作り出す酵素が骨格筋で活性化し、筋肉に脂肪が蓄積されてゆく。脂肪がたまった筋肉では、細胞がブドウ糖を取り込みにくくなり、血糖値コントロールが難しくなるインスリン抵抗性となる。さらに、筋肉は減少しやすくもなり、この先に待ち受けるのが2型糖尿病だ。