これでは、「強制労働」とはいえない。
もし、日本がここで推薦を見送れば、「韓国などの批判を受けて、日本が引き下がった」という情報だけが広まり、世界各国には「日本には、きっと負い目があるのだろう」という認識が定着してしまう。外交では「沈黙は金」は、あり得ないのだ。
さまざまな事情から今年度の推薦を見送るならば、文化審議会が昨年末、国内推薦候補に選ぶ前に事前調整しておくべきだった。そもそも、韓国や中国が今後、ユネスコの世界遺産委員会の委員になれば、さらに推薦は厳しくなる。
ここまで来れば、新潟と日本の誇りと名誉を守るためにも、正々堂々とファクト(事実)ベースで反論して、ユネスコの世界遺産委員会の了解を得ていくしかない。リングに上がる前にタオルを投げてはダメだ。
安倍政権時代の2015年、日本が推薦した「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が決まった。韓国はこのときも、長崎市・端島炭坑(通称・軍艦島)に反発していたが、官邸に「歴史戦チーム」をつくり、政治家と官僚が一体となって毅然(きぜん)と対峙(たいじ)した。
20年3月には、「明治日本の産業革命遺産」を紹介する内閣府の「産業遺産情報センター」を開設した。加藤康子センター長を中心に、端島の資料や証言を集めて、事実を明らかにした。韓国側の思惑とは違ったかもしれないが、ファクトの強さを証明した。
岸田首相は、歴代最長の4年7カ月も外相を務めた。いまこそ、新たな「歴史戦チーム」を立ち上げて、日本の誇りと名誉を守り抜いてほしい。 (談)