12月9日、雅子さまは58歳の誕生日を迎えられ、文書でご感想を公表された。その冒頭で「今月初めには娘の愛子が成年を迎え、多くの方々から温かい祝福を頂きましたことに心から御礼を申し上げます。5日に行われた成年の行事もおかげさまで無事に終えることができ、安堵いたしました。愛子が生まれてからの20年間は長かったようにも、あっという間だったようにも感じられますが、様々な思い出が思い起こされて感慨深く思います。同時に、あの幼かった愛子がもう成年かと思いますと、信じられないような気持ちもいたします」と述べられている。
長女・愛子さまのご成年は人生の特別な節目であり、天皇皇后両陛下は成年行事を非常に大切なものと考えられて、特に雅子さまが尽力されたご様子が窺えた。
お出ましになる場にふさわしいかどうか
私がこれまで雅子さまのお召し物に注目してきたなかで、衣服の美しさというよりはむしろ、お出ましになる場にふさわしいかどうか、という視点からお選びになっているのでは、と思うことが多かった。特に令和の時代に入り、スーツやドレスを新調される機会が増えてからは、それぞれの式典の性質や雅子さまのお役目を一層考えられているのではないか。ある宮内庁関係者はこう話す。
「宮さま(愛子さま)がご立派に成長されたことを、両陛下はさぞお喜びのことと思います。東宮家の“公私の問題”も長年批判されてきましたが、天皇陛下は、ご自分たちの“存在自体が仕事であって、国民あってこそのご一家である”というお考えを根底に持ち続けられてきたのではないかと拝察しております。それは皇后陛下のお召し物に対する考え方にも、宮さまが記されたご成年に当たってのご感想にもよく表れていると思います。祝賀を受けられたお三方の表情は柔和で、マスク越しでも深い感謝やお喜びが伝わってきました」
雅子さまは落ち着いたアイボリーのロングドレスを
愛子さまが披露された上品な光沢のあるローブ・デコルテ姿には、そうした雅子さまから受け継がれたセンスが随所に見られ、母娘でよくご相談なさって完成されたスタイルだったのではないだろうか。岸田文雄首相ら三権の長から祝賀を受けられた際、愛子さまの潔い純白のローブ・デコルテとティアラをより輝かせるかのように、雅子さまは落ち着いたアイボリーのロングドレスをお召しになっていた。
雅子さまらしいドレープが取り入れられていて、かつては新年一般参賀のロングドレスや、お帽子の側面にドレープのようなデザインがあしらわれていたこともある。雅子さまのこだわりの一つなのかもしれない。両陛下が奈良県橿原市の神武天皇陵を参拝された際の淡いグレーの参拝服も思い起こさせるデザインだった。
ウエストの切り替えが高めの位置にあるため雅子さまの身長の高さが生かされているが、実は、愛子さまのローブ・デコルテにもウエストの位置からタックがあしらわれていることで、縦長のIラインが演出されている。
入念に計算されたシンプルな装いから気品と風格が漂っていた。
雅子さま58歳に 愛子さまの純白ローブ・デコルテにご尽力、輝きを引き立てた“ドレープ”ロングドレスの秘密《“ご覧になった?”とお気持ちを…》
黒田清子さんの“愛子さまご誕生”への思い
愛子さまのご成年を祝って、皇室のご慶事らしくボンボニエール(砂糖菓子を入れる小箱)が作られたようだ。
紀宮さま(現・黒田清子さん)のご結婚では引き出物として、側面に紀宮さまのお印の「未草」が、ふたには黒田家の家紋にちなんだ「柏」が金と銀であしらわれた陶磁器のボンボニエールが贈られ、中には京都の老舗特製の五色の金平糖が入っていたという。
今回、愛子さまは両陛下とご相談の上、コロナ禍での国民生活などへの影響を考慮されてティアラのご新調を見送られた。天皇の娘という同じお立場であった黒田清子さんに借用を相談されたところ、清子さんは快諾し、愛子さまは感謝の思いを抱かれながらティアラを借用されたという。愛子さまご誕生について、清子さんはかつてこのように思いを明かしている。
「ご無事に内親王様がお生まれになったことを、本当に嬉しく思います。両殿下のお喜びはもとより、ずっとご案じになり、妃殿下をおいたわりでいらっしゃった両陛下のご安堵を拝見しておりまして、私自身も何だかほっといたしました。新しい家族を迎えた喜びと共に、秋篠宮様の内親王様方の時と同じく、多くの人々が我が事のように喜びを表して祝ってくださったことも嬉しいことでした。折々にお会いする度、お顔つきがしっかりとされ、成長される速さを感じております」(2002年、お誕生日文書回答より)
12月5日の愛子さまの成年行事当日、祝賀のため皇居を訪れた黒田清子さんが、帰りの車中でほっとしたような表情を浮かべていたことは印象深い。
黒田清子さんは「先行きを考えるとき……」
その翌日の12月6日、 安定的な皇位継承のあり方を議論する有識者会議は、皇族数の確保に向けて「女性皇族が結婚後も皇室に残る案」と「皇族の養子縁組を可能にして旧宮家の男系男子を皇籍復帰させる案」の2案を併記した最終報告骨子を示し、政府はこれを了承した。年内にも最終報告を取りまとめるという。
内親王という立場について、黒田清子さんは「先行きを考えるとき、将来的にその立場を離れる可能性がどうしても念頭にあるため、中途半端に投げ出してしまうことのないように、継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」(同前の文書回答)と述べたことがあるが、愛子さまのお立場は今後どうなっていくのか。女性皇族方が戸惑いや不安を覚える必要がないよう、ご意思やご希望を尊重した上での議論の前進が望まれる。
新年行事に雅子さまと愛子さまが
今年は2年連続で、1月2日恒例の新年一般参賀の中止が発表され、ビデオメッセージが検討されているという。昨年の陛下の「新年ビデオメッセージ」では、雅子さまが上品なベージュのノーカラージャケットにチャイニーズノット(チャイナボタン)を取り入れられ、雅子さまらしい装いをなさっていた。
思い入れのあるスーツやドレスをお召しになると、“ご覧になった?”とお気持ちが関係者に伝えられることがあるという。元旦の新年祝賀の儀では、皇后陛下である雅子さまと、成年皇族となられた愛子さまがご一緒に出席されるとみられる。
雅子さまはお誕生日に際してのご感想で、「愛子には、これからも様々な経験を積み重ねながら一歩一歩成長し、成年皇族としての務めを無事に果たすことができますよう願っております」と述べられた。元旦にそのお姿を拝見できるのを心待ちにしている人は多いのではないだろうか。